ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1005

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と三十六

「タカガ コーヒーマメ サレド コーヒーマメ」②

 「僕が最も頻繁に伺うそのコーヒー豆屋さんの店主は、とにかく焙煎、命。焙煎には直火と熱風とがあるらしく、当然のごとく、直火であってこその、焙煎。その微妙な手加減、煎(イ)り加減に、焙煎の醍醐味もコーヒー豆の醍醐味もある、と、豪語する」

 直火焙煎、というヤツだな。

 おそらく、私がスーパーで購入しているモノの大半は熱風による焙煎なのだろうな。確証はもてないが、ナンとなくソンな気がする。

 「お次は、つい最近、たまたま見つけた老舗のコーヒー豆屋さんなんだけど、ソコのオヤジさんは、とにかく豆。購入先に拘(コダワ)るのは勿論のコト、購入したあとも、とにかく『マメ』。一粒一粒、マメなチェックを怠らない。パッと見では絶対に気付けない欠点豆まで執念でハンドピック。その、とことんマメなコーヒー豆、愛。畏れ入るよ、まったく」

 欠点豆をハンドピック、か~。

 暇な時、一度、チャレンジしてみようか。

 「その二店はコーヒー豆専門店なんだけど、三店めは、海に沈む夕日が美しい喫茶も兼ねたお店。ココは淹(イ)れ方。とはいっても、オーソドックスなネルドリップなんだけどね」

 あ~、ジャマ臭いヤツだ。以前、使ったことがある。その度に洗わなくてはいけなくて、そのジャマ臭さから、いつのまにか、使い捨てのペーパーフィルターを使うようになってしまった。

 「あくまで個人的な感想だけど、よりコクを感じるというか、マッタリ感が増すというか、そんな感じかな。そして、いよいよ大取(オオトリ)。四店めは、つい最近、惜しまれつつ店仕舞いされたストロング系焙煎がウリの喫茶店。ソコは、なんと生豆を洗う。利き酒セットみたいな、洗っていないモノとの飲み比べセットでも用意しくれていたら、まだ、僕のような若輩者でもその違いがわかったかもしれないが、そんなセット、用意してくれるはずもなく、その違い、結局、最後までわからなかった。でも、友だちは、クリアーで旨いよ、などと賞賛していたから、きっとナニかが違ったんだろうな、と、思う。マスター自慢の玉子サンドとの相性もバツグンで、そのブラボーなマリアージュを、もう二度と味わえないと思うと、ホント、悲しくなるよ」

 たしかに、そういう感じの喫茶店、ドンドンと少なくなっているような気がする。

 あっ。そうだ、一つだけ、私なりの拘りがあった。

 豆は、必ず手動でガリガリと挽(ヒ)く。

 少し前まで電動のモノを使っていたのだが、ある知人が「プロペラ式は絶対にダメ」と、あまりにもシツコク言うものだから、プチ奮発して購入したのである。彼の指摘通り、香りが立つようになった気はする。そんな気がしているだけかもしれないけれど。

 トにもカクにも、そんな、Aくんの「熱きコーヒー豆愛」噺(バナシ)4連チャンに耳を傾けているうちに、なんとなく、すぐさま結果に表れないかもしれないし、そう簡単にはわかってもらえないかもしれないが、ひょっとしたら、政治も教育も、ナニもカも、そうした熱き愛やら拘りを忘れずに、ひたすら頑固に持ち続けて取り組んでいくことが大切なのかもしれないな。という思いが、あたかも、煎(イ)り立て、挽(ヒ)き立て、淹(イ)れ立ての、そのコーヒーの香りのようにブワンと立ち上る。

 たかがコーヒー。

 されど、コーヒー。

 たかがコーヒー豆。

 されど、コーヒー豆。

(つづく)