はしご酒(Aくんのアトリエ) その九百と二十七
「ヨヲオサメ~タミヲ~スクウタメニ~」
「ヨをオサめ~、タ~ミ~を~スクうぅぅぅた~め~に~」
えっ。
ナニやら怪しげな呪文みたいなモノを、唐突に、突然、大声で唱え始めたAくん。いつにもまして、不気味。新興宗教の教祖にでもなろうとしているのか。
「新興宗教でも始めるつもりか、って、今、思ったろ」
ええっ。
ま、まさか、私の心の内なる声が漏れてる?、聞こえてしまっている?
「ト、ト、ト、トンでもない」
「その焦りかたは、まず、図星だね。でも、ムキになって否定する必要はない。僕も、ソイツを耳にした時、同じコト、思ったから」
ええ、え~。
ナンだかよくわからないまま、ホッとする。
「ヨをオサめ~、タ~ミ~を~スクうぅぅぅた~め~に~、だぜ。エセ新興宗教の教祖でなかったら、さしずめ、得体の知れない自信に満ち満ちた妄想癖のある専制君主か、お殿さまか。ぐらいしか、思い付かねえな」
妄想癖のある、お殿さま、か~。
「多分、シモジモの民たちを救うため、余は、寝る間も惜しんでホンニャ~ラ~ラ~ラ~」
ホンニャ~ラ~ラ~ラ~、って。
「とりあえずカネだけはバラ撒いてやるから、余を信じ、余に従い、余のために働き、励み、儲けよ。成長させよ。で、なければ、アナタたち、民の、賃金アップなど、そして、アナタたち、民を、救うことなど、できるわけなかろう」
見事なまでの、上から目線。
異常なまでの、根拠なき、曖昧模糊(アイマイモコ)とした、自信。
「みたいな、そんな感じにしか、少なくとも僕には、聞こえなかった、某国の、某トップの所信表明。いや~、なかなかの聞き応え、大したもんだぜ、まったく」
某トップのその所信表明、残念ながら、私は耳にしていない。が、なんとなく想像はつく。想像だけで理解した気になるのは、けっして、好ましいことではないけれど。
「財源なき大盤振る舞い、とりあえずのパンとサーカス。残念ながら、大抵は、ニッチもサッチもいかなくなっちまうんだがな」
「その分、あとで、ゴッソリ、いただかせてもらいます、ですか」
「ソレを露骨にヤっちまうと反発を買ってしまいかねないから、おそらく、年金やら、福祉やら、医療やら、あたりの従来のサービスを、コッソリ、カットでもするんだろう」
「そ、そんな、コト、って」
「充分にあり得る」
「あり得る、の、ですか」
「ソレも~コレも~民たちの努力~不足~。あなたたちの~せい。自業~自得~。などと、お殿さまは、シモジモである民たちを断罪するんだろうよ、きっと」
うっわ~、最悪。
ゴッソリとコッソリとのコラボ、マリアージュ、というか、悪魔合体。
コレほど、ズルくて、陰湿で、恐ろしい、悪魔合体。そうそうない。
(つづく)