ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1488

はしご酒(Aくんのアトリエ) その九百と十九

「カキストクラシー?」

 発酵。

 菌やら酵母やらの地道な働きによる恩恵。

 酒はもちろんのこと、味噌も、納豆も、キムチも、チーズも。

 中でも、乳酸菌によって生み出された、この酢は、調味料としてもトップクラス。オマケに、発酵仲間との相性も良く、たとえば、納豆に酢を垂らして目一杯掻き混ぜて喰らう「酢納豆」は、血圧降下にも期待がもてるというから嬉しくなる。と、なると、勿体ないというご意見もあろうかとは思うが、ココは勇気を振り絞って、添付されているタレやらカラシやらはポイしてしまった方が良さそうだ。

 そんな、嬉しくなる、酢、なのだけれど、とくに私との相性がバツグンにいいのが、柿酢。

 そう、発酵と熟成の傑作、柿酢なのである。

 もちろん、どれほどカラダに良くても摂り過ぎには気を付けなければならない。とはいえ、悪玉コレステロールの天敵としてその存在感を大いに発揮しているし、更には、塩分排出やら脂肪分解やら、と、私の、あなたの、日々の生活を、暮らしを、健康面から下支えしてくれている、そんな柿酢の、そのパワーは、ドコからドウ考えても侮れない。と、少なくとも私は信じている。

 ん?

 んあ、あっ、ま、まさか、この酢の物、の、この、酢。

 「こ、これ、柿酢、ですか」

 「おっ、お~、スゲえな、君の舌」

 やっぱり。

 「大好きなんです。お酢が、とくに柿酢が」

 「だろうな。で、なきゃ、一口食べただけで、『これ、柿酢ですか』は、ねえよな」

 「ありがとうございます」

 なんだか、メチャクチャ、嬉しい。

 「美味しいだけではない様々なパワーを秘めた柿酢は、私たちの暮らしを健康面から下支え。コレが柿酢のウリですから」

 「柿酢と暮らし、ね~。ま、たまたまなんだろうけれど、悪名高きカキストクラシーとはエラい違いだよな」

 カキストクラシー?

 「な、なんですか、それ」 

 「柿酢と暮らし、ならぬ、カキストクラシー。ギリシャ語の『kakistos(カキストス)』と『kratos(クレイトス)』、クラトス、との合体版」

 と、言われても、申し訳ないが、ナンのことやら、サッパリ。

 「つまり、最悪と支配との合体版ということだ」

 「さ、最悪と支配との合体版、ですか」

 「そう。トンでもないヤツが圧倒的な権力を握った、握ってしまった、社会。君が言う、その手のヘルシ~感満載の下支えとは、真逆の」

 真逆、の、社会、か~。

 ドコかで聞いたことが、見たことが、あるような、ないような。

 「ソレが、カキストクラシーなのですか」

 「そう。柿酢には申し訳ないがな」

 ホント、マジ、申し訳なく思う。

 「私が柿酢だったら、そのネーミング、あまりいい気はしないでしょうね」

 「と、なると。ドコに訴えていいのかわからんが、とりあえず、柿酢のイメージダウンに繋がる恐れがあるから、『そのネーミングに異議あり!、名称変更を強く要望する』と、柿酢も、柿酢業者も、関係者も、訴えておいた方がいいのかもしれねえな」

(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1487

はしご酒(Aくんのアトリエ) その九百と十八

「アクマガッタイ? テンシガッタイ?」

 そもそも、反省がないところには教訓も生まれない。だから、同じ過ちを繰り返すのです。と、ある元官僚が宣っていた。その通りだと思う。しかし、己がヤらかした過ちではないから反省などしない、などというモノ言いが、ナゼか罷り通ってしまう、ソレなりに支持も得てしまう、ものだから、呆れ果てる。どころか、怖くさえなる。

 だから、あの人たちは、あの人の憧れでもある、としか思えない、あの、明治という時代の、富国強兵を、殖産興業を、そして、燦然と光輝く大日本帝国憲法を、いま再び。などと、本気で宣えてしまうのだろう。

 まさに、富国強兵と殖産興業と大日本帝国憲法の悪魔合体。コレほどの時代錯誤丸出しの悪魔合体トリオ、そうそうお目にかかれるものではない。

 ・・・

 ふ~。

 あの人たちは、いったい、ナニを思い、ドコに向かおうとしておられるのか。私ごときには、サッパリ。

 ・・・

 ん?

 んん?

 この匂い。 

 お、おお!?

 ま、ま、まさかの~。 

 「お待たせ~」

 思いの外、早く、舞い戻ってきた、Aくん。

 そして、お盆の上には、やっぱり、やっぱり酢の物。そう、酢の物。しかも、キュウリとワカメとキクラゲの天使合体、トリオ。いや、申し訳なさそうにチョロリとミョウガものっけられているから、カルテット、か。トにもカクにもナンてステキなカルテットだろう。大の酢の物好き、の、私であるだけに、嬉しい。

 で、Aくん、ソコにナニをもってくる。

 ワクワクしつつ、お盆をもつ彼の手のもう一方の手に目をやる。

 おっ、4号瓶。

 やはり、日本酒か。

 「栃木は鬼怒川水系の伏流軟水仕込みの純米大吟醸」

 おおっ。

 「なれど、かなりの辛口、生原酒」

 ほ~。

 「この手の酢の物に、結構、合うと思うんだよね」

 そう言いつつ、Aくん、錫(スズ)製のお猪口にトクトクと。

 ワクワクに新たなるワクワクがトクトクと被(カブ)さって、ワクワクのミルフィーユ。こうなってくると、もう、辛抱などできるはずもなく、早速、キュウリとワカメとキクラゲとミョウガとを小さくコンパクトにひとまとめにして、パクリと。

 うわっ。  

 美味しい。

 少し甘めのこの酢、カルテットとの相性、かなり、いいかも。カルテットな食感s(ズ)も楽しいし。などと浸っている場合ではない。大慌てで、間髪入れずに、その、よく冷えた辛口生原酒を。

 グビリ。 

 うっわ~。

 合う。マジ、合うわ~。

(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1486

はしご酒(Aくんのアトリエ) その九百と十七

「センシンコク デハナク マンシンコク?」

 「ナニが、ドコが、いったい、先進なんだろうな」

 ん?

 「せんしん?」

 「先進国の、先、進」

 あ、あ~、先進。

 「エラそうに『先進』などと宣ってはいるけれど、ちょいとお先に前を、程度の、コトなのかも、ってな」

 先進、先進国、か~。

 先進とはナニか。ナニを以(モッ)て先進なのか。私ごときでは、まず、説明なんてできそうにない。

 私の場合、情けない話だが、コレに限らず、なんとなく理解していたように思っていたコトが、実は、全くもって理解なんてできていなかったということが、あまりにもあり過ぎる。

 「経済力にモノを言わせてちょいとお先を進んでいた科学の力も技術力も、結局は、ほぼ軍事利用。見てみろよ。あのドローンなんて、もう、完全に兵器」

 ソレは、私も、気になっていた。

 悲しいかな、いつだって、利便性は、平和利用の枠内に収まらないのである。

 「そして、おそらく、あの手塚治虫氏も、横山光輝氏も、危惧していたように、近い将来、2足歩行ロボットも、兵士として、殺人兵器として、戦場に送り込まれることになるんだろうよ」

 ん~・・・、そういえば。

 「ドローンなどの無人兵器の登場によって更なる戦争のゲーム化が、みたいなことを、ある学者が宣っていたような」

 「戦争のゲーム化、ね~。かも、かもしれねえな。己の手で他人(ヒト)を殺(アヤ)めたことによって己の心に刻まれた深い傷が、皮肉にも、戦争反対の声を、世論を、広めていくことに繋がっていくんじゃないかと淡い期待を抱いていただけに、戦争がゲームみたいなことになっちまったら、もう・・・」

 珍しく、Aくん、語尾が、デクレッシェンドに。

 そして、寡黙にテーブルの上を片付け始めたと思ったら、またまた、奥へと姿を消してしまった。

 ・・・

 戦争なんて。

 戦争なんて、そんなモノ、体験など、ましてや他人を殺めたり、せずとも、誰もが、皆、無条件に、理屈抜きに、「反対」できるモノであるはずなのに、ナゼか、「社会悪」も「必要悪」、みたいな、そんな風潮が根強い。ソレが、その手の先進国による戦争のゲーム化によって、更に一層、と、なると、デクレッシェンドに宣いつつ奥へと姿を消したAくん同様、私も、「もう」、という気持ちになってしまう。

 ・・・

 もう。

 もう、こうなったら、ちょいとお先に前を、程度の、その手の先進国には申し訳ないが、コレからは、「先進国」ではなく「慢心国」と呼ばせてもらおう。(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1485

はしご酒(Aくんのアトリエ) その九百と十六

「コミュニティフリッジ?」

 「Community fridge」、と、またまた唐突に、Aくん。

 え?

 「コミュニティ、フリッジ」

 「コ、コミュニティ、フリッジ、ですか」

 いつものことながら、コレもまた、初めて耳にする。

 圧倒的に読書量が少ないからなのだろうけれど、知らないワードがあまりにも多すぎて悲しくさえなる。

 「フリッジは refrigerator(リフリジレイター)。冷蔵庫。ナゼだか冷凍庫の freezer(フリーザー)の方が認知されているようだが」

 と、いうことは、コミュニティの、冷蔵庫?

 高騰する電気代節約のために、皆で、冷蔵庫を、共有?

 「つまり、公共冷蔵庫」

 おっ、やっぱり、冷蔵庫の共有か。

 「そうした冷蔵庫の共有が重要視されるほどエネルギー問題が、この星にとって、大き問題として注目されてきた、ということですか」

 と、結構、自信満々に、私。

 「ま、ソレも、言えなくもない、かもしれないが」

 ん?、違うのか。

 「今、ココで、問われているのは、冷蔵庫本体よりも、むしろ、その中身」

 な、中身!?

 申し訳ないが、サッパリ、意味不明。

 「情けない話だが、この星は、食料品の3分の1を廃棄している」

 さ、3分の1、を、廃棄!?

 「いわゆる食品ロス。でもね、だからといって、全てのピーポーたちが満腹か、というと、まったくそんなことはない」

 んん?、ん~。

 「この星では、飽食と理不尽な飢えとが共存している、ということだ」

 んんん、ん~。

 「先ほどは、エラそうに『思い』なんて、みたいなことを宣わせてもらったが、でも、やっぱり、一般ピーポーたちにとっての熱き思いは大切で、そんな思いに突き動かされて活動している知人がいる、わけ。その活動が、Community fridge。共同冷蔵庫」

 共存する飽食と飢え。

 食品ロスと貧困。困窮。

 その削減と生活支援。

 を、セットにして、という活動、か。

 なるほど。

 うっすらながら、コミュニティフリッジの全貌が、ようやく、見えてきたような気がする。

 「食品ロスと、生活支援。が、一体化した、プロジェクトだということですね」

 先ほどよりも、ウンと、自信満々に、私。

 「そう、そういうこと。無理なく、自然に、多くのピーポーが参加できる。利用できる。稀有なプロジェクトとして評価はされている。 らしいが」

 らしいが?

 「そんな『熱き思い』の足を引っ張る『高き壁』がある」

 高き、壁?

 「ナニがナンでも自己責任、的な、考え方、思想、理念、といったモノが、ちょっとした世論の支持まで得て、見事なまでに足を引っ張ってくれるわけだ」

 またまた自己責任、か~。

 おそらく。

 例の、あの、『さもしい顔してもらえるものはもらおうとか、弱者のふりをして少しでも得をしようとか』などと、ナニよりも真っ先に、まず、宣ってしまう、宣ってしまえる、考え方、思想、理念、こそが、Aくんが指摘するところの「足を引っ張る」の元凶なのだろう。そんな気がする。(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1484

はしご酒(Aくんのアトリエ) その九百と十五

「ホウノ シハイヲ シハイシタガル ヤマイ」

 思いは曲者(クセモノ)。

 と、ある知人が宣っていたことを、ナゼか、今、突然、思い出した。

 もちろん、「思い」があってこその我が人生、強い思いなき人生に成し遂げられるモノなど無し、と、信じてやまない私は、酒の力も借りて、即、否定。そのままズルズルと平行線でウヤムヤの、そんな、その夜の酔っ払いオヤジたちの居酒屋談義であったように記憶する。

 思いは曲者。

 彼のその言葉が、ナゼか、今、妙に引っ掛かる。

 「強い思いは、エナジーにもアクセルにもなると思うのです」、と、Aくんに負けないぐらい思いっ切り唐突に、私。

 「強い思い?、エナジーにもアクセルにも?」

 「ナニかを成し遂げようとするなら、エナジーもアクセルも必要でしょ」

 「そりゃそうだが、ただ」

 ん?

 「たとえば、圧倒的な権力を握る権力者が、己の強い思いだけで突き進み始めたとしたら、いったい、どうなるよ」

 権力者が己の強い思いだけで、か~。

 たしかに、かなり危ない、かもしれない。

 「エナジーの質、アクセルの精度、も、さることながら、まずは、利きのいいブレーキだろ。ブレーキがいい加減な、あるいは、そもそもブレーキがない、車に、誰が乗車するんだ」

 誰も、乗車なんかしない、か。

 「トップに強い権限をもたせれば、何事も、前に進め易くなる。改革に期待もできる。などと能天気に宣いがちな一般ピーポーたちがおられるが、一人の人間に期待し過ぎ。期待し過ぎたコトで引き起こされる、かもしれない、危険性を、あまりにも軽んじ過ぎている」

 期待し過ぎたコトで引き起こされる、危険性、か~。

 そう言われてしまうと、私ごときの細やかなる思いなど、一気に、その土台から崩れていってしまいそう。にはなるけれど。

 「とはいえ、でも、やっぱり、己の強い思いなき人生なんて、ナニも生み落とせないように思えて」、と、とりあえず食い下がる、私。

 「ソレは、その通り、同感。でもね、権力者は僕たちとは根本的に違う。多くのピーポーたちの生活に、命に、大きく関わっているからな」

 生活に、命に、か~。

 「ちょいと逸れてしまうかもしれないが、ほら、あの、何処(ドコ)ぞのトップの自信満々の言葉なんて、まさに、それ」

 ん?

 「私は信念をもって批判に耐えている政治家です」

 んん?

 「一聴しただけでは、ドコに問題があるのか、と、思えなくもないけれど、言い方を変えれば、私の信念、思い、の、ためなら、その達成のためなら、如何(イカ)なる批判も、声も、受け入れない、聞き入れない、ということだろ。コレって怖くないかい」

 怖い、かも。

 「そしてもう一人。あの、己の強い思いだけで大統領業に勤(イソ)しんでおられる某国の某暴君も、そう。どうしても、『法の支配』を支配したがる病(ヤマイ)に侵されてしまいがちだ」

 「法の支配を支配したがる病、ですか」

 「そう。法の支配さえも単なる『批判』、『文句』、としか、受け止められないようなヤツは、ひたすら耐えるか、ぶっ潰すか、己の支配下に置くか、ぐらいしか、できねえだろ」

 できない。と、思う。

 結局、受け入れない、聞き入れない、系の、権力者の、信念、思い、なんて、所詮、曲者。と、いうことなのだろう。

 あの時の、あの、彼の、「思いは曲者」の意味もまた、今、ようやく、わかったような気がする。

 なんだか今宵は、今までズッとモヤモヤしっぱなしであったモノたちのモヤモヤのベールが、ペラリペラリと剥ぎ取られていくようで、実に気分がいい。(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1483

はしご酒(Aくんのアトリエ) その九百と十四

「ザ・ストローマン ハビコル!」

 「反論」

 ん?

 「あっていいと思う」

 んん?

 「ナゼか、この国では、文句言い、などと揶揄されがちだが」

 んんん?

 「ナンでもカンでも言われたい放題では、あまりにも惨め。情けなさ過ぎる」

 んんん、ん~。

 「ただし。反論には反論のオキテがある」

 反論の、オ、オキテ?

 「のだけれど、そのオキテを守れない、どころか、守る気すらサラサラない、トゥ・クオーカーやらストローマンやらが、このところ、ヤタラと元気に蔓延りまくり出しているものだから厄介なんだよな」

 トゥ・クオーカー?、ストローマン?

 って、いったい、ナニ?

 初めて耳にする。

 「『お前だって』論法、tu quoque(トゥ・クオーク)、で、しか、反論できない、トゥ・クオーカー」

 お前だって、論法、か~。

 ソレなら、時折、耳にする。

 「と、『ソコだけ切り取り論点ずらし』論法、藁(ワラ)人形論法、の、申し子、ストローマン。の、トンでもコンビが、反論の質を著しく低下せしめてくれている、わけ」

 だから、単なる、文句言い、などと揶揄されてしまうのか。

 いや、そんな「トンでもコンビ」系でなかったとしても、この国では、「文句言い」と揶揄されてしまいがちなような気がする。

 そして、もう一つ。

 ナゼ、ストローマン、藁人形、なのか。が、全くもって、ナゾ。藁人形と論点ずらしが、どうしても、結び付かない。

 「トゥ・クオーカーは、ソレなりに、わからなくもないのですが、ストローマン、が、ちょっと。ナニが、ドコが、藁人形なのですか」

 「僕もよくは知らねえんだが、たとえば、ほら、よく、『戦争反対!』に対して『じゃ、戦地に行って戦争をやめさせてこいよ』って感じの反論があったりするだろ」

 あ、あ~、ある。

 「アレなんか、典型的なストローマンスタイルな反論だと思う」

 「あっ、そういえば、以前、『原発反対!』を唱えていた女優さんに対して、『じゃ、電気を必要とする映画づくりも、もう、やめろよ』みたいな、バッシング、あったような気がします」

 「あった、あった。お門(カド)違いのバッシング、反論な」

 「ソレもストローマンスタイル、ですか」

 「だな。見事なストローマン、ストローマンスタイル。致命的に筋の悪い反論」

 ドコからドウ見ても考えても、彼女は、原発の安全性、危険性、に、言及していただけなのに、ソコから一気に『じゃ、君は、電気を必要としないんだな』、『じゃ、映画もつくるなよ』になってしまっていた。なんとなくおかしいな、とは、思っていたが、アレがストローマン、か~。

 けれど、ナゼ、ストローマン、藁人形なのか、が、全くもって、ナゾ。の、まま。

 「反論するにしても、しないにしても、まず、我々が目指すべきは、ストローマンではなく、スチールマン」

 「ス、スチールマン、ですか」

 「そう、スチールマン。藁人形みたいなものを目指すのではなく、鉄、鋼鉄人形」

 こ、鋼鉄人形!?

 申し訳ないが、サッパリ、ワケがわからない。

 「ただし、ただしだ。自分自身を鋼鉄人形にするわけではない」

 「違うのですか」

 「違う。自分では、自分の意見では、なく、相手を、相手の意見を、考えを、コチラ側で、よりわかりやすく補填(ホテン)して、ガッチリしたモノに仕立て上げる。たとえば、『君が言おうとしているコトは、こういうコトだよね』、みたいな」

 あ、あ~、いわゆる「いい人」の返しだ。勝手に都合良く解釈して、切り取って、揚げ足をとって、論点ずらしバリバリに反論してくる人たちとは真逆のタイプ。

 「相手を、相手の意見を、考えを、藁人形のようなフワフワしたモノに、口撃し易いモノに、するのではなく、まずは鋼鉄人形に。そうした上で、必要であれば、ソコから、やっと、反論。ソレが、ごく真っ当な、反論の筋道」

 なるほど、なるほどな~。

 Aくんが宣うところの反論の「オキテ」、が、ドウにかコウにか、私なりに、わかったような気がする。(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1482

はしご酒(Aくんのアトリエ) その九百と十三

「クリカエサセナイ ト キオクノ フウカ ト」

 「戦争の惨禍を繰り返さない」

 ん?

 「と、宣うのだろうと、勝手に、思い込んで、ボンヤリ聞いていたところに」

 んん?

 「なんと」

 んんん?

 「戦争の惨禍を繰り返さ、せ、ない。と、きたもんだ」

 繰り返さ、せ、ない?

 「悪名高き、他責の『せ』」

 他責、の、せ?

 「が、たった一文字、分け入ってきただけで、一気に意味合いが違ってくる」

 戦争の惨禍を、繰り返さない、と、繰り返させない、か~。

 なるほど。

 ソレが国のトップの言葉なら尚のこと、ダレがダレに、の、その、ダレが、根本的に違ってくることぐらい、こんな私でもナンとなくわかる。

 「ソレが一般ピーポーの言葉なら、まだ、この星のそこかしこの圧倒的な権力を握る権力者たちへの、権力者たちの『ヤラカシ』への、あるいは、戦争そのものへの、熱き決意表明と受け取れなくもないですが、でも、ソレがトップの言葉となると、ガラリとその矛先が違ってきますよね」

 「違ってくるよな~。全ての責任は敵国にある。私たちは、あくまでも罪なき犠牲者。みたいな」

 全ての責任は敵国にある、か~。

 あっ、そういえば。

 「かなり前になりますが、ほら、『私自身は当事者とはいえない世代ですから、反省なんかしておりません。反省を求められるいわれもない』などと平然と宣った、宣えた、国会議員、いましたよね」

 「いたな~」

 「そんな感じと同様に、微塵も、ソコに自己批判も反省もナニもないものだから、いとも簡単に他責の『せ』を入れ込むコトができてしまうのではないでしょうか」

 「かもしれねえな。で、『戦争の惨禍を繰り返さ、せ、ない』か。でも、でもだ。あの人たちが敵国だと、仮想敵国だと、宣う、その国、って、いったい、どの国のことだよ」

 どの国のこと?

 「そもそもこの国は、ダレの命令によって、ダレの、ナンの、ために、どの国と戦って、原爆を2発も投下されて、トンでもない数の犠牲と共に敗戦の日を迎えることになったのか。そして、今も尚、ナゼか、その国の、軍事基地がこの国には数多ある。ナゼ、あるんだ。しかも、ナゼか、その国から、信じられないほどの高額で兵器を購入しなければならない。ナゼ、しなければならねえんだ」

 んんん、ん~。

 ダレがダレに、の、その「ダレ」がダレのことなのか、が、メチャクチャ、ヤヤこしくなってきたものだから、もう、ほぼお手上げ状態。

 「よくわかんねえが、ソレもコレもナニもカも、風化、って、ヤツなのかもな」

 「ふ、風化、ですか」

 「そう、戦争の記憶の、風化。その風化を上手く利用して、あの人たちにとって好都合な敵をつくり上げてしまった。と、いうことなのかもしれないぜ」

 好都合な敵、か~。

 「そんな好都合な敵に向けて、屈折したナショナリズムやら愛国主義やら排外主義やらを振りかざし、エラそうに、『戦争の惨禍を繰り返させない』などと宣っては悦に入っている、としか、思えねえんだよな~」

(つづく)