はしご酒(Aくんのアトリエ) その九百と十九
「カキストクラシー?」
発酵。
菌やら酵母やらの地道な働きによる恩恵。
酒はもちろんのこと、味噌も、納豆も、キムチも、チーズも。
中でも、乳酸菌によって生み出された、この酢は、調味料としてもトップクラス。オマケに、発酵仲間との相性も良く、たとえば、納豆に酢を垂らして目一杯掻き混ぜて喰らう「酢納豆」は、血圧降下にも期待がもてるというから嬉しくなる。と、なると、勿体ないというご意見もあろうかとは思うが、ココは勇気を振り絞って、添付されているタレやらカラシやらはポイしてしまった方が良さそうだ。
そんな、嬉しくなる、酢、なのだけれど、とくに私との相性がバツグンにいいのが、柿酢。
そう、発酵と熟成の傑作、柿酢なのである。
もちろん、どれほどカラダに良くても摂り過ぎには気を付けなければならない。とはいえ、悪玉コレステロールの天敵としてその存在感を大いに発揮しているし、更には、塩分排出やら脂肪分解やら、と、私の、あなたの、日々の生活を、暮らしを、健康面から下支えしてくれている、そんな柿酢の、そのパワーは、ドコからドウ考えても侮れない。と、少なくとも私は信じている。
ん?
んあ、あっ、ま、まさか、この酢の物、の、この、酢。
「こ、これ、柿酢、ですか」
「おっ、お~、スゲえな、君の舌」
やっぱり。
「大好きなんです。お酢が、とくに柿酢が」
「だろうな。で、なきゃ、一口食べただけで、『これ、柿酢ですか』は、ねえよな」
「ありがとうございます」
なんだか、メチャクチャ、嬉しい。
「美味しいだけではない様々なパワーを秘めた柿酢は、私たちの暮らしを健康面から下支え。コレが柿酢のウリですから」
「柿酢と暮らし、ね~。ま、たまたまなんだろうけれど、悪名高きカキストクラシーとはエラい違いだよな」
カキストクラシー?
「な、なんですか、それ」
「柿酢と暮らし、ならぬ、カキストクラシー。ギリシャ語の『kakistos(カキストス)』と『kratos(クレイトス)』、クラトス、との合体版」
と、言われても、申し訳ないが、ナンのことやら、サッパリ。
「つまり、最悪と支配との合体版ということだ」
「さ、最悪と支配との合体版、ですか」
「そう。トンでもないヤツが圧倒的な権力を握った、握ってしまった、社会。君が言う、その手のヘルシ~感満載の下支えとは、真逆の」
真逆、の、社会、か~。
ドコかで聞いたことが、見たことが、あるような、ないような。
「ソレが、カキストクラシーなのですか」
「そう。柿酢には申し訳ないがな」
ホント、マジ、申し訳なく思う。
「私が柿酢だったら、そのネーミング、あまりいい気はしないでしょうね」
「と、なると。ドコに訴えていいのかわからんが、とりあえず、柿酢のイメージダウンに繋がる恐れがあるから、『そのネーミングに異議あり!、名称変更を強く要望する』と、柿酢も、柿酢業者も、関係者も、訴えておいた方がいいのかもしれねえな」
(つづく)