ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1384

はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と十五

「オカネガ ナイカラ コトワッタ?」

 「ただボンヤリと、眺めているだけでは、おそらく、目の前をスル~ッと通り過ぎて行ってしまいそうなレベルの他愛もない噺なのかもしれないけれど。よくよく目を凝らして見てみれば、充分に、イヤになるほど情けない、悲しいほど情けなくなってくる、そんな噺を、もう一つ」

 ん?

 「ちょいと耳にした、選挙絡みの、戯言(タワゴト)」

 選挙絡みの、戯言?

 「いつもながらの例のあの、お、カ、ネ。おカネにも絡む、ナンともカンともな戯言。が、コレ。おカネがないから断った。お、カ、ネ、が、ないから、断った、だ」

 おカネがないから、断った?

 一休さんじゃないけれど、頓知(トンチ)が効き過ぎていて、ナンのコトやらサッパリ。

 「その服、その靴、その器。以前からズッと欲しかったんだ。勧められたけど、でも、持ち合わせがないから致し方なく断った。なら、理解はできる。しかし、『絶大な発信力も影響力もあるインフルエンサーを紹介させていただきますぜ』、と、なると、一気にナニもカもヤヤこしくなる」

 インフルエンサーを紹介させていただきます、ぜぇえ?

 インフルエンサーを票集めのツールとして、上手い具合に利用する新手の選挙ビジネス、か。

 「僕はね。仮に、もし、人が人であるために、ナニがナンでも大事にしなければならないアレやらコレやらが、妙に、ヤタラと欠落している、わりには、圧倒的なフォロワー数を誇る、そんなインフルエンサー、を、カネで雇える、カネさえあれば思いっ切り利用できる、などというコトが罷り通ってしまった、と、したら、もう、ナニが、ドコが、真っ当な選挙なんだ、と、結構、マジに、思ったりしているわけ」

 ん~。

 さすがにソレは、ダメだろ。

 そんなモノを認めてしまえば、選挙制度そのモノが崩壊してしまうかもしれない。

 「ある候補者が、そうした『そんな貴女のためのインフルエンサーによる世論誘導ビジネス』からお誘いを受けた、という。もちろん、即座に、『そんなのはダメ!。あなた、いったい、ナニを考えておられますの。恥を、恥を知りなさい』、と、お断りした。と、思っていたら、『おカネがないから断った』、と、きたもんだ。じゃ、カネがあったら飛び付いたのかよ。実はソレが本音なのかよ。などと、思ったりしているうちに、なんだかヤタラと情けなくなってきたわけよ」

 ソレが本音なのかよ、か~。

 あの人たちだけに充分にありがち、と、言ってしまえばソレまでだが。目の前の票に、票という餌(エサ)に、余ほどの信念をもち合わせていない限り、どうしても、条件反射のように尻尾(シッポ)を振って擦り寄っていく、定め。性(サガ)。ゆえの、ポロリと口から溢れ出た、「おカネがないから断った」、なのだろう。

 そうではなくて、ソコはバシッとおカネがあっても断れよ。ソコはビシッと「そんなのダメだろ」と言ってくれよ。という、Aくんのその思い、わからなくはない。

 「なんだかさ~。倫理観とか、モノの道理とか、そして、あらゆる垣根を飛び越えたグローバルな友愛とか、って、もう、政治の世界から消し去られようとしているような気がして、やるせねえんだよな」

 ん、ん~。

 ナニもカも、カネ、カネ、カネで動いて、動かして、動かせて、しまいがちな、そんな、カネがカネ呼ぶカネカネワールドのように思えて仕方がない今日この頃なだけに、おっしゃる通り、なんだか、メチャクチャ、やるせない。(つづく)