はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と十四
「ナゼ ヘイキ?」
「ナゼ、平気なんだろうな」
「へ、兵器!?。武器の、兵器、ですか」
「違う違う。I don't care and pretend not to know. の、平気 」
ド、ド~ント、ケア、アンド、プ、プレ?、更に一層、わ、わからん。
Aくんの、この、妙に英語を使いたがる癖。どうにかならないものか。
「平らな気分、の、平、気」
あ、あ~、平、気。平気ね。最初からそう言ってくれれば。
「なんか、不満そうだな」
うわっ。
「ト、トンでもない。不満なんて」
「ならいいけど」
顔に出てしまったか。ヤバいヤバい。
「ほら、例のあの、国際的、国家的ビッグイベント。イロイロあって、大手ゼネコンが外国のパビリオンから手を引いてしまったからか、未払いトラブル、で、かなり揉めているよな」
あ、あ~、未払い、未払いね。ソレは私も存じ上げている。
「たしか、着工遅れによるあまりの過密スケジュールにビビッて手を引いた、でしたっけ」
「そう、それそれ。『間に合わせろ~、間に合わせろ~』にビビッたんだろうな、きっと」
「ですが、気概に感じた下請け業者さんたちの底力のおかげで、ごく一部のパビリオン以外は、どうにかこうにか間に合った。にもかかわらず、そうした下請け業者さんたちへの未払いが多発。真の功労者に対する仕打ちが、コレでは、あまりにもヒドい、ヒド過ぎる、と」
「だよな。おそらくは、その『間に合わせろ~』のためにフルで突貫工事した分の追加料金の未払いなんだろうけれど。ヒデえよな~」
こういうコトを察知して、大手ゼネコンは手を引いたのだろう。
「しかも」
ん?
「その『間に合わせろ~』の発信元の協会が、事務局が、知らん顔。他人(ヒト)事。アレだけ困っている方たちがいるというのに、まるで、平気。ってんだから、たまったもんじゃねえぜ」
知らん顔、他人事、平気、か~。
「しかし、ナゼ、あの人たちは平気でいられるのでしょう」
「ナゾだよな。普通の神経なら、まず、平気ではおれんだろうから」
もちろん、本当のトコロのコトは、私ごときにはわかるはずもないけれど。でも、あの人たちの、説明責任を果たそうとするその気持ちの希薄さの、できることならオープンにしたくないというその隠蔽体質の、そのせいで、以前から、ズッと、その、一貫した杜撰(ズサン)さが、どうしても、気になって気になって仕方がなかったのだ。
「アレだけのカネ(金)が、血税が、注ぎ込まれた、国際的、国家的、プロジェクトだぜ」
「なのに未払い。なのに知らん顔。なのに他人事。なのに平気。そりゃ~、未払い状態の当事者たちは、たまったもんじゃないでしょうね」
「例のあの、4年に一度のスポーツの祭典もそうなんだけれど。資質的にも、能力的にも、もう、すでに、この国は、この手のこういう大きな責任を伴うビッグイベントに、携われる、器じゃねえのかもしれないな」
(つづく)