はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と弐
「マイナンバーカード ト キンキュウジタイジョウコウ ト アイコクシン ト」
「信頼感の失墜、消失。コレほどの悲劇はないかもな」、とAくん。
信頼感の、失墜?、消失?
「先ほども話題に上っていましたが、つまり、ようするに、信じる者は救われる、からの、信じない者は救われない、ですか」、と私。
「ん~・・・、微妙に違うな」
ん?
「信じない。というよりは、どちらかというと、信じられない。信じることができない。だな」
信じることができない?
「たとえば、その国のエライさんたちを、エライさんたちのするコトを、我々一般ピーポーが信頼できないとなったら」
「国として立ち行かなくなる、かもしれませんね」
「そう、立ち行かなくなる。ほら、あの、ナニかと巷を賑わしがちなマイナンバーカードなんか、その典型だろ」
マイナンバーカードが、その典型?
「広範囲に、同時期に、多くのピーポーたちにトンでもないコトが起こってしまった際の給付金的なモノを、より迅速に、よりスムーズに、の、ためのツールとして、最初の内は、僕も、かなり好意的に捉え、期待もしていたわけ」
私も。
「給付金でさえも、中抜き。その中抜きで、中間マージンで、ボロ儲け。みたいなコトを耳にしてしまうと、銀行口座もナニもカも紐付けにて、できる限り無駄をなくしてスマートに、って、思いますよね」
「思う。普通、思う。しかし、ソレって、ソコに、肝心要の強靭な信頼感の裏付けが得られていてこそ、なんだよな」
ん~。
コ、コレか。信頼感の失墜、消失、が、もたらす悲劇は。
「ほら、ヤタラと憲法に緊急事態条項なんてのを入れ込もうとしているだろ」
あ、あ~。
「ほとんどの一般ピーポーが、緊急事態宣言と同じようなモノだと思ってしまいがちなヤツですよね」
「ワチャ~。ソレ、全然違うから」
しかも、マイナンバーカードと緊急事態条項との相性の悪さ、なんとなくながら、この私にもわかる。
「緊急事態条項の恐ろしさは、ソレを執行する権力者によって、意図も簡単に悪魔の所業にもなり得るところにある」
「悪魔の所業にも、ですか」
「そう。『さ、国の一大事だ。愛国心漲(ミナギ)る諸君、持ってるモノはカネ(金)でもナンでも全て差し出してくれたまえ』みたいなコトになりかねない、ということだ」
な、なんと。
そのための、紐付け?
「カネを配り易くする、のではなく、カネを吸い上げ易くする、ですか」
「かもしれないぜ。ドチラも問題アリアリで、アレだけ異を唱える者もいるにもかかわらずだ、普通なら一旦立ち止まって再考、熟考、するところを、そんな素振り、微塵も見せることなく、妙に焦って、妙に慌てて、妙に強引に推し進めていこうとしているんだからな」
「かなり怪しいですね」
「怪しい怪しい。マイナンバーカードと緊急事態条項に対するあの人たちの尋常ではない執着。気持ち悪いぐらい、怪しい」
(つづく)