はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と二十
「ショクニンカタギ」
多かれ少なかれ、大なり小なり、この世の中のほとんどは、「モノづくり」だと言っていいと思うんだよな、とAくん。
モノづくり、か~。
「私も、モノづくりのモノって、単なるモノにとどまらない、たとえば、政治さえも含めたありとあらゆるモノを指しているように思います。そういう意味では、モノづくりはホシづくり、ということなのでしょうね」
「ホシづくり?、あ、あ~、星、星づくり、ね。上手いこと言うな~。モノづくり、は、星づくり。僕もそう思うよ」
ムフフフフ、と、なにやら妙に嬉しくなる。
「ところで、そんなモノづくりにとって、切っても切っても切れないモノ、って、ナンだと思う?」
切っても切っても切れないモノ、か~。
いろいろあるのだろうけれど、残念ながら、コレだ!、というモノは、そう簡単には頭に浮かびそうにない。
「僕はね、この世の中のほとんどがモノづくりだと思うからこそ、そのモノづくりに携わるピーポーは、皆、まず、職人であるべきだと思っている」
「まず、職人、ですか」
申し訳ないが、ピンとこない。
「そう、職人。というか、職人がもつ職人ならではの気質(キシツ)、職人気質(カタギ)だな。ベースにコレ無くして、この星の明るい未来なんて、あり得ないんじゃないか、ってね」
ベースに職人気質、か~。
「己の誇りのためなら、信念を貫くためなら、いかなる悪魔の誘いも打算も損得も忖度も寄せ付けず、払い除け、地道にコツコツとやり通す、やり抜く、その、頑固なまでに実直な姿勢が、実にカッコいいわけだ」
なるほど。
皆が皆、とまでは言わないけれど、ひょっとすると、そうした「職人気質」なるものをもち合わせていないがために、ありとあらゆる悪魔たちの誘いに心乱され、奪われ、打算や損得や忖度に、塗(マミ)れに塗れてしまう、のかもしれないな。(つづく)