はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と九十一
「ベイモンダイ! ベイモンダイ?」
「そんな米(コメ)、コメ問題だが、同時に、米(ベイ)、ベイ問題なんじゃねえのか。ってな」
ベイ問題?
「つまり、外圧」
外圧?
「外圧に屈せず、米(コメ)を、農家を、守るなんてことが、あの人たちにできるとは、到底、思えない」
外圧に、屈する、か。
「唐突に、ココぞとばかりに飛び出てきたりするわけよ。『輸入米を』、とね」
あ~、あの国の米(コメ)、だな。
あっ、だから、米(ベイ)問題、か。なるほど、なるほどな。コメ問題はベイ問題、の、その意味が、後れ馳せながらようやくわかる。
「1945年8月15日のあの玉音(ギョクオン)放送から随分と経ったが、僕たちは、まだ、まだまだ、『耐え難きを耐え、忍び難きを忍び』なのかもしれねえな」
ん~・・・、つまり、所詮、私たちのこの国は、敗戦国以外のナニモノでもない、と。
けれど。
「かもしれませんが、アレだけエラそうに『取り戻す』とか『守り抜く』とか、と、宣ってきたあの人たちが、結局は、『耐え難きを耐え、忍び難きを忍び』では、あまりにも情けない、と、どうしても思ってしまうのですが」
「あ~、『取り戻す』、『守り抜く』、ね~。あった、あった、ありました」
「妙に勇ましいキャッチコピーには要注意、でしたよね」
「そう、その通り、要注意。そもそも、そもそもだ。ナニからナニを取り戻すんだ、守り抜くんだ、って、話だよな」
申し訳ないが、おそらく、酪農家や米農家たちがナニをドウ訴えようが、あの人たちはナニも取り戻せないし守り抜けない、と、思う。
だから、唐突に、ココぞとばかりに「輸入米を」、なのだろう。そんな気がしてならない。
「この際、あの人たちの選挙ポスターのキャッチコピー。思い切って、正直に、『耐え難きを耐え、忍び難きを忍び』にしちゃえばいい。そうすれば、自(オノ)ずと、曖昧な対立軸もハッキリして、ダレに、ドコに、己の清き一票を投じればいいのか、が、見えてきそうだろ。そうは思わないかい」
思う。
本音を隠そうとするから、誤魔化そうとするから、肝心要のトコロが見えにくく、わかりにくく、なるのである。ま、ソレが狙いなのだろうけれど。(つづく)