はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と九十四
「ゴウマンデ キミョウナ ナショナリズム?」
「共通の敵をつくり、寄って集(タカ)って口撃、攻撃することで、歪んだ正義感、団結感、高揚感、が。そして、排斥、排除、が、ズリズリと、イヤな音を立てて加速する」
そう、ユルリと語り始めたAくん。
「さらに」
ん?
「加速した排斥、排除が、一層、そうした歪んだ正義感を、団結感を、高揚感を、ズリズリと、ズリズリと、パワーアップする」
ん、ん~。
「もちろんこの国も含むこの星のそこかしこで、見受けられる、nationalism(ナショナリズム)。個人の尊厳なんてドウでもよくて、ドコまでも全体主義。それゆえ、どうしても、差別、弾圧、戦争、の、臭いが、常に立ち込める」
んん、ん~。
そうかもしれない、か。
単なる愛国心ともお国自慢とも違う、ナンともカンともな臭いは、おそらく、そのあたりから漂ってくるのだろう。
「言っておくが」
ん?
「先ほどの『独立』、『自立』と、『排斥』、『排除』とは、その根っこも枝葉も果実も、ナニもカもが違うから」
ん、ん~。
「ついでに、もう一つ言っておくが」
ん、んん?
「何人(ナンビト)たりとも、この星に生きる一人ひとりが有している、有していなければならない、尊厳を、踏みにじることはできないから」
んん、ん、ん~。
だけれども、相も変わらずこの星は、奇妙なナショナリズムにまみれがち、なのである。
そう、傲慢で、奇妙な、ナショナリズム、まみれ。
国境のコチラ側にもアチラ側にも踏みにじられてはいけない個人の尊厳があることを、ナゼか理解できない、理解しようともしない、そんな歪んだ、歪みまくった正義感、団結感、高揚感、頼みの、その、傲慢で奇妙なナショナリズム、が、エラそうに幅を利かせている限り、この星は、永遠に、ずっと、差別、弾圧、戦争、から、逃れられないような気がする。(つづく)