ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.400

はしご酒(4軒目) その五十一

「アブリダサレル ヤミ」②

 「旨味どころか、むしろ、灰汁(アク)みたいなものが、炙り出される」、とAくん。

 「アクですか」

 「そう、灰汁。旨味を表(オモテ)とするなら、その裏側(ウラガワ)にあるエグ味とかニガ味とか、という、そういうヤツね」

 「裏側ですか」

 「その裏側が炙り出されるわけよ」

 つまり、旨味とアクとは表裏一体、ということなのだろうか。

 「でも、このエイヒレを、いくら炙ったところで、そんなアクみたいなものが出てくるとは、到底、思えないのですが」、と、ほんの少しだけ反旗を翻してみる。

 先ほどより増して、更に不適な笑みを浮かべてAくんは、そんな反旗に動じる様子など微塵も見せることなく、ユルリと語り続ける。

 「その通り、優秀なエイヒレは、アクなんてものとは、もちろん無縁。だけれども、この星に生きる我々人間や、その人間がつくりあげた社会は、となると、そうは問屋が卸さない」

 エイヒレに端を発するエイヒレがらみのミステリーは、人間やら社会やらをも巻き込んで、壮大なサスペンスストーリーに様相を変えつつあるものだから、なんだか妙に、ドキドキし始めてしまう。(つづく)