ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.564

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五

「キニナッテシカタガナイ ヨムヒトモンダイ」②

 そんな、再び、沈黙の扉を開けてしまったAくんを、横目に見ながら、私は、スティック状に切られた練り物系のアテに箸を付ける。さつま揚げよりも色黒で、見るからに凝縮感がある。

 軽く表面を焼いてくれているせいか、香りもいい。

 口に放り込む。

 想像していた通り、魚の旨味がギュギュギュギュギュッと詰まった感じで、とにかく濃い。

 「美味しい!」

 おもわず唸ってしまう。

 少し、驚いた表情を見せつつAくん、沈黙の扉の向こう側から、もう一度その扉をこじ開けて、「あ、あ~、和歌山の、ドコだっけ、昔、よく、甲子園に出場していた高校と、同じ名前の漁港の真ん前にある、練り物系の天ぷら屋さんのところの、ほねく、『ほねく』ね。ほ、ね、く」、と。

 「ほねく、ですか」

 「そう。骨まで喰うから、骨喰う、ほねく。違ったかな」 

 「たしかに、丸ごと、さかな!、って、感じは、します」

 「そうそうそうそう、太刀魚、丸ごと太刀魚、『丸ごと太刀魚』だったような、なかったような」

 「丸ごと太刀魚であろうがなかろうが、とにかく、かなり美味しいですよ、これ」

 などと、二人して、いい加減な、「ほねく」談義に花を咲かせていると、ついにAくん、「ヨムヒト問題」のその核心について、ユルリと語り始める。(つづく)