ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.401

はしご酒(4軒目) その五十二

「アブリダサレル ヤミ」③

 「平時なら、そうそうその裏側が炙り出されるなんてことはないのだろうけれど、負のエネルギーの嵐のようなものに見舞われたその時から、今まで、何気に封印されていた灰汁が、ブチュブチュと炙り出されてくる」、とAくん。

 「人間やら社会やらの中に封印されていたアクですか」、と私。

 「その、人の中で眠っていた、灰汁、悪魔、が、目覚める。その、社会の中で放ったらかしにされてきた、捨て置かれてきた、弱点、問題点、が、可視化される。そんな感じだな」

 なるほど、と、Aくんの「嵐によって炙り出されるアク」理論に耳を傾けているうちに、なにやら、違和感めいたものが、ポッと頭をもたげる。

 その違和感めいたものをハッキリとさせるために、もたげたその思いを、Aくんに伝えてみようと試みる。

 「そうした悪魔やら弱点やら問題点やら、が、炙り出されること、そのこと自体は、それほど悪いこととは、どうしても思えないのですが・・・」

 するとAくんは、その違和感のボヤけた輪郭に補正を加えるかのように、緩やかに言葉を返す。

 「君の言う通りだ。トンでもない嵐によって炙り出された闇(ヤミ)は、やがて、太陽の光に、その闇の全貌を明らかにされる。このことは、どこからどう見ても悪いことじゃない」

 見えなかったものが、見えてくる。

 見ないようにしていたものが、見たくもなかったものが、目の前に、否が応でも現れる。

 やはり、「炙り」は、魔法なのかもしれないな。(つづく)