ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.258

はしご酒(4軒目) その九

「テンサイ ト ジンサイ トノ キョウカイセン モンダイ」

 今夜は妙に自分のことを語りたい気分、などと言っていたわりには、サラリと近況プチ自伝を終了したAくん、ではあるのだけれど、なにやら、とくにこの頃、ムムムムムと疑問に思えてならないことが、いくつかあるのだという。

 その一番手が、「天災と人災との境界線」問題。

 「境界線問題ですか」

 「そう」

 「全く違うでしょ、境界線なんてところからウンと離れた右と左に、両者が鎮座しているイメージですけど」、と、私としては珍しく、かなり思い切って全否定をしてみる。

 すると、じゃ、これはどうよ、とでも言いたげな顔つきで、Aくんのちょっとした逆襲が始まったのである。

 たとえば、人類がもたらした、この星の温暖化によって、とてつもなくパワーアップした台風による尋常じゃない被害、は、パッと見は天災に思えるかもしれないけれど、ホントにそうなのかどうか、自信をもって「イエ~ス」と答えることができますか、というAくんの指摘に、いとも簡単に降参しそうになる。

 巷では、損害保険も含めて、まだまだ天災と人災との二大「災」時代を引きずったままのようだが、おそらく、近いうちにもう一つ、ニューフェイスの「災」が、満を持して登場するに違いない、というのが、Aくんのこの問題に対する結論。

 「愚かなる人類が招いた災害、言うならば、人類災、この人類災が、境界線周辺で、その出番を心待ちにしながら、不気味さを漂わせて鎮座している」

 そうAくんが宣うところの、その、不気味に鎮座する人類災なるもの、を、なんとなく想像しているうちに、それが、なかなか厄介な妖怪のように思えてきて、背中のあたりがゾゾゾゾゾとする私なのである。(つづく)