ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.585

はしご酒(Aくんのアトリエ) そのニ十六

「アイシュウノ ツチダンゴ」③

 「驚いてしまうほど遠い地から、病の平癒(ヘイユ)を願うために訪れていたらしくて、それってもちろん、当時のことだから、歩いて、だろ。そのことだけでも、痛々しくて、切なくて、・・・。彼女たちの悲壮な思いが、ニジニジと、ニジニジと、時空を越えて伝わってくるわけよ、わかる?」

 「わかります、わかりますとも」

 目に見える。

 願(ガン)をかけながら土を捏(コ)ねる。

 願をかけながら土を丸める。

 深々と、どこまでも深々と願をかける。

 「目に見えるような気がします」、と、時の流れの遥か彼方を眺めるがごとく、私。

 Aくんがそうであったように、ナニかを求めて歩くわけでも、当てがあるわけでもなく、ナニ気にプラプラと歩いたりするだけで、そんな、時空越えの出会いがあったりするのだから、この国のそこかしこには、まだまだ素晴らしきものが、地域の人たちに守られながら、ひっそりと、鎮座している、ということなのだろう。

 そして、Aくんのこの言葉で、時空を越えた哀愁の土団子物語は、その幕を下ろす。

 「神さまが、どうにか願いを聞き入れて、無事、病が平癒した暁には、感謝の気持ちをコメ(込め)て丸めたコメ(米)の団子を、そっとソコに、お供えするらしいよ」

(つづく)