ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.259

はしご酒(4軒目) その十

「ゲンダイアートダマシイ モンダイ」①

 唐突に、愚かなる人類災を熱く語り始め、そのまま一気に、その二番手に突入かと思いきや、それを上回る唐突感で、「なにか、炊いたん、と、揚げたん、ちょこっと、お願いできますか」、と、Aくん。さすが元祖「唐突感」、見事なものだ、と感動しつつも、あまりの唐突ぶりに、おもわず、べつに聞かなくてもいいようなことを口にしてしまう。

 「タイタン?、アゲタン?」

 「炊いた、いや、煮た、かな、煮たもの、ね、と、揚げたもの」

 「あ~、炊いたん、と、揚げたん、ですね」

 「だから、最初から、炊いたん、と、揚げたん、と、と」

 加えて、突然の京都方面の関西風であったものだから、会話がさらにギクシャクしてしまったのだけれど、なにやら、女将さんが、どうも、そちらの出身であるらしい。

 「この店の暖簾をくぐらせてもらうのも、ホントに久しぶりなんだよな」、とAくん。すかさず、「ほんと、心配してたのよ」、と女将さん。そこに、カウンターの向こうの端から「死んだんじゃないかね~って」、と、かぶせてくる常連さん。たしかに、馴染みの店に、しばらく顔を見せなかったりすると、たいていは、死んだことになりがちではある。

 彼とバッタリと再会したものだから、ちょっと一杯、ということに、と簡単に説明したAくんは、私のほうに向き直り、「結構集中することができたからな~、気がついたらこんな時間になっていて」、と、その説明を完結させた。そのあまりの簡潔さに、店内の皆が、一瞬にして「なるほど~」ということになる。

 なのだけれど、私は、その集中の元が、再び、ムムムムムと気になり始めていた。Aくんが、それほどまでに集中することができた、つくりたいもの、描きたいもの、のそのものものたちに対する興味が、私の中で、ドドドドドと積み重なるように肥大する。(つづく)