はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と四十九
「ナンミン?」
「少し前、突然、友人が、『難民』という言い方には違和感がある、と、言い出したわけ」
難民?
「ナゼ?、と、尋ねると、誤解を招きかねない、と」
誤解を招く?
ん~、そう言われると、たしかに、帰宅難民とか、買い物難民とか、どう考えても『難民』本来の意味ではない使われ方をしている、か。
「じゃ、そもそも世界的にはナンと言われているのですか」
「世界的にかドウかは知らないが、英語では、refugee(レヒュージー)、refugees(レヒュージーズ)だったと思う」
「レヒュージーズ、ですか」
「そう。あの、レッド・ツェッペリンの名曲、♪Immigrant Song(イミグラントソング)の『immigrants(イミグランツ)』とも、単なる『evacuees(イヴァキュエイツ)』とも違う、refugees」
発音が良すぎて、なんだか更にヤヤこしくなる。
「要するに、新天地に新たなる起死回生の仕事を求めて、の、移民。でも、とりあえず安全が確保されるまで避難する、の、避難者。でも、ないということだ」
移民でも避難者でもない、か~。
なるほど、少し絞られてきたような気はする。気はするが、まだ、肝心のナゾは解明されていないままだ。
「では、ナゼ、そのお友だちは、『難民』という言い方には違和感がある、と、宣われたのでしょう」
「多分、島国ならではのこの国の閉鎖性、ゆえ、なんじゃねえかな」
「閉鎖性、ですか」
「そう。未だ鎖国気分のピーポーたちが、結構、いたりするから」
鎖国気分のピーポーたち?
「ソレは、つまり、不幸にもそういった状況に置かれてしまった他国の人たちに、我が国に助けを求めてやって来られた人たちに、対して、冷たいと」
「平穏が、安全が、脅かされる、と、漠然と思い込んでいるんだろう」
脅かされる、か~。
「あくまでも僕の推測だが、そういった鎖国気分のピーポーたちにとって『難民』という言葉の響きは、難しい人たち、難儀な人たち、難儀を呼び込む人たち、を、連想させてしまうのかもしれねえな」
ふ~。
ナニが難儀を呼び込む人たちだ。
私たちにだって、コレから先、何時何時(イツナンドキ)ナニが起こるかわからないのである。自分たちがそういう立場になって、「入って来るな~」、「出ていけ~」、などと言われて、初めて、気付く。初めて難民たちの気持ちが理解できる。では、あまりにも想像力が無さ過ぎるし、あまりにも情けな過ぎる。
「ちなみに、オーストラリアでは『reffo(レフォー)』と言われたりもしているらしい。reffoは『リフレッシュする』、『リフレッシュしてね』。もちろん、キレイゴトでは済まない壁もハードルも幾重にも立ちはだかっているんだろうけれど、助けを求めている罪なきピーポーたちのリフレッシュを応援できる、そんな国であるべきだと思うし、そんな我々で、ありたいよな」
(つづく)
追記
イロイロあったし、イロイロあるだろうし。
でも、ナニがナンでも良いお年を。