はしご酒(4軒目) その三十八
「ハカナゲ トイウ カンジ ガ スキ!」②
一升瓶が上下に揺れたからだろうか、一杯目より白く濁ったそれは、錯覚かもしれないけれど、雑味が、というよりはむしろ、さらにふくよかで、まろやかさが際立ったような、そんな気がする二杯目であった。
そんなことを静かに思いながら、もう一口、と、グラスを口元にまで運んだそのとき、完全に沈黙モードに入ってしまっていたAくんが、その沈黙の扉を開ける。
「この三つの、はかなげ、の中で、正解は、どれだと思う?」
イタズラ好きの子どものような顔を見せながら、突然、問うてきたものだから、かなり驚いてしまう。
と当時に、そんな私の前にスッと出されたシワクチャあがりの小さな紙切れ。そこに書かれていたその三つの「はかなげ」に、気持ちを切り替えて、目をやる。
そこには、「イ(ニンベン)」の隣に、それぞれ「夢」、「美人」、「髪」と書かれた奇妙な漢字が三つ、後ろに「げ」を伴わせて、ニンマリと鎮座していたのである。(つづく)