ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1316

はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と四十七

「ダカラ キンキュウジタイジョウコウ ガ ヒツヨウ?」

 私ごときが、その詳細を、正確に、端的に、語ることはできないが、隣国で起こったこの巨大な権力の行使を、乱用を、民衆のチカラで跳ね除けたコトに対して、心から敬意を表したい。

 いかなる理由があろうとも、圧倒的な権力者が、思い通りにならないからといって、その権力で抑え込みにかかる、などというコトがあっては、絶対にならない。

 「少し前になりますが、隣国で、トンでもないコトが起こってしまったようですよね」、と私。

 「あ~。幸い、どうにかこうにかコトなきを得たようだが。往々にして、権力を握っちまうと、人は、その権力を行使したくなる、という、典型的な事件だったな」、とAくん。

 もちろん、どの国においても起こり得ること。ほんの少しの油断で、勘違いで、過ちで、ある日突然、巨大な権力が、私たちに牙を剥(ム)き、合法的に、力尽くで、襲ってきかねないというコトを、私たちは忘れてはならない。

 「そういえば、その事件を受けて、ナニをとち狂ったか、この国のある国会議員、『だから、この国には、緊急事態条項が必要なのだ』みたいなことを、鬼の首をとったかのように宣っていたな。しかも、権力者の暴走を抑え込むためにある憲法の、その中に入れ込もうとしているんだから、ほんと、マジ、恐れ入るよ」

 な、なんという。

 たしかに、気持ちが悪くなるほど、恐れ入る。

 たとえば、チカラでこの国を鎮圧せしめた独裁者なら、そういう発想になるのも頷ける。しかし、国民に頭を下げ、国民に選んで頂いた国会議員が、微塵も悪びれることなく「場合によってはチカラによって国民を抑えにかかるコトもまた良し」という発想になってしまえるのだから、もう、不思議でしかない。

 「一応言っておくけど、緊急事態条項と緊急事態宣言とは、月とスッポン。全くもって似て非なるモノだから」

(つづく)