ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.264

はしご酒(4軒目) その十五

「ソウゴシット ノ ススメ」①

 ある画家が、ある歌手に、歌が歌えていいよね、と嫉妬し、ある歌手が、ある画家に、絵が描けるっていいよな~、と嫉妬する、というそんな相互嫉妬な関係に、私は嫉妬するんだ、と、その主旨を掴みかねる、少々ややこしい「相互嫉妬」論の口火を切るAくんは、私のお猪口に、ぬる燗のそれを注ぎ入れようと待ち構えていたようだ。

 気持ちよくタイムスリップしていたため、陶器製の徳利を持つAくんの手を、ボ~っと眺めていたらしい私、への、「ま、グビッとやってよ」というその声が、天空から舞い降りてきたような、そんな気がしてハッと我に返り、大慌てでSちゃんに別れを告げ、現在に、無事帰還する。

 そして、トクトクトクと注がれた、その酸も香りも立ち上がるぬる燗を、グビッとやる。フ~、たしかに美味い。

 いつのまにか、とてもイモイモした「炊いたん」も、タイムマシ~ンな「揚げたん」の隣にチョコンと鎮座している。その両者の佇まいが、あまりにもお似合いで微笑ましかったものだから、なんとなく笑けてくる。ちなみに、この「笑ける」、京都の方言らしく、女将さん、チロリとだけ、軽く反応する。でも、やはりここは、「笑えてくる」ではなく、どう考えても「笑けてくる」だろう、と、不思議にこだわってしまう私自身にもまた、笑けてくる、のである。(つづく)