はしご酒(2軒目) その七
「アクション アッテノ リアクション モンダイ」①
「レンコンのきんぴら、ええんとちゃう~」、とOくん。
「いいですね~。レンコンのあの独特な食感、好きだな~」、と私。
「カ行とサ行とマ行との、その間を、行ったり来たりの食感なんやよな~」
か、か行と、さ行と、ま行とを、行ったり来たり?
「しかもやな~、カタカナのカ行とサ行とマ行」
ん、んあ、あ~、なるほど、なるほどね。
その感じ、わからなくはない。
「その行ったり来たり、なんとなく、わかるような気がします」
「せやろ。わかるような気がするやろ」
「はい。調理方法で面白いほど変身しますよね」
いかにも、そうそうそうそう、という表情を浮かべつつ、Oくん、さらに、「スリスリして、チョイと海老やら枝豆やらも忍ばせて、ムシムシするだけで、モチモチなレンコン饅頭の出来上がりなわけやん。ほんで、シャープな香りがメチャクチャええ感じの、あの、奈良の大和橘を贅沢に使ったポン酢なんかをタラリとかけて、パクつくわけや。いや~、ホンマ、たまりまへんで~」、と。
うわ~。
私の口の中は、もう、隅から隅まで丸ごとレンコンまみれである。
ひとしきりの「レンコン愛」論を、二人して、ゴキゲンに展開した後、Oくんは、初志貫徹、レンコンのきんぴらを注文しする。話の流れから、ココは、レンコン饅頭か、と、一瞬、ほんの少しだけ思いはしたが、初心忘るべからず、その選択に異存はない。
すると、「レンコンもいいですけど、若ゴボウ、どうです?、 炒め煮にしたのがありますけど」、と、お兄さん。
若ゴボウ?
パッと見はフキ。ヒスイ色が美しい、季節感が際立つ、そんな野菜なのだそうだ。
しかし、申し訳ないが、この場面で、このタイミングで、若ゴボウという選択肢はない。もちろん、Oくんも、同じ思いであろう。
「ええやん、それ。それでええわ、それにして」
えっ!?
すでに、口の中どころか、口そのものが完全にレンコン化してしまっていた私は、椅子から転げ落ちそうになってしまった。
ふ~、危ない、危ない。
醜態を晒(サラ)さずに済んでホッとしつつ、なんとなく、ボンヤリと、そして、取り留めもなく、ある、ドウでもいいようなコトを考え始めてしまう。
・・・
コレコレの理由で、コウでなければならない、というコトがあったりする。
コウでなければ、アンなコンなソンなリスクが予想される。だからこその、コウでなければならない、はず。で、あるにもかかわらず、あるアクションによって、「えっ!?」、みたいな感じで、いとも簡単に、コウでなくてもよかったりしてしまう。と、なると、じゃ、コレまでの、コウでなければならない、は、いったい、ナンだったのか。ソレでは、あまりにも、ナゾがナゾ呼ぶ、ナゾナゾ「こうでなければならなかったんじゃないの」ワールド、過ぎるのでは、ないのか。
・・・
そう。コウでなければならなかったんじゃ、ないのですか、Oくん。
と、一応、心の中で、少し厳しめに言わせていただく。ま、Oくんの注文なのだから、好きにやってくれていいのだけれど。
しかし、この「消されたレンコンのきんぴら」事件のようなコトが、国やら、地方自治体やら、おそらくAくんやOくんが身を置く学校みたいな組織やら、でのコトとなると、当然、話は違ってくるだろうし、ソレでは済まなくなってもくるはずだ。
それでも、そうした「えっ!?」というコトに対して、「フットワークが軽い!」などと賞賛される方もおられるようだけれど、はたして、ホントにそうなのであろうか。(つづく)