ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.102

はしご酒(2軒目) その六

「ヒト ノ ミリョク ガ ミリョク」②

 ドライブが好きだ。

 ドライブ先での一期一会の出会いや発見の数々が、実に楽しい。だがしかし、私の車人生に、それほどの歴史はない。

 そもそも私は、(恥ずかしながら)プチ自転車ボーイであったのである。

 そう、プチ、自転車ボーイ。

 わざわざフランスから、組み立てられていない自転車を直で個人輸入し、近くの自転車屋さんで組み立ててもらった。ワクワクしつつ受け取りに行ったとき、パールホワイトのフレームが、妙に眩しかったことを、今でも鮮烈に覚えている。

 フレンチバイセコ~が、まだまだ身近ではない、そんな時代であったのである。

 Aくんは、ほとんど自転車に興味を示さなかったけれど、Oくんは、私と同じく、(恥ずかしながら)プチ自転車ボーイであったらしい。さすが、Mr. 一期一会パラダイス、の、Oくん。サイクリングでの新羅万象との出会いが、ホントに楽しかったようだ。

 そう、サイクリングでの、出会い。

 少し前、ある、伝説の、猛烈にパッショネイトな女性のお墓の前で、自慢の愛(自転)車で本格的なサイクリングを楽しむ外国人観光客の方と出会った。「日本が好きです」、と、達者な日本語で話してくれた。もちろん、理屈抜きに嬉しく思いはしたのだけれど、その思いと同時に、一つの疑問も芽生える。

 愛(自転)車とともに、はるばる、あえてこの極東の国に、やってきた彼が言うところの「日本が好きです」のその日本は、いったい、どんな日本のことなのだろう。なんだか妙に気になったのである。

 安全?

 治安がいい?

 そのあたりかな、と、そのときは、漠然と思う程度であったのだけれど、その、2時間弱ほどのちに、そのナゾが解けたような気がしたのだ。

 ナニがあったのか。

 なんと、地元野菜を売られている小さな店で、2時間弱ほど前に別れたあの外国人観光客と、再会したのである。彼は、両手に立派な大根をもちながら、その店のおばちゃんと、和気あいあいとしたクロスオーバーな会話を楽しんでいた。その彼の表情の中に、全ての答えがあるように思えたのである。

 やはり、人なのだな、人の魅力が、魅力なのだな、という思いが、あらためて、私の心の奥の方からホンワリホンワリと、ジンワリジンワリと、湧き上がってきたのだ。(つづく)