ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.643

はしご酒(Aくんのアトリエ) その八十四

ジェンダー?」②

 気が付けば今回も、ご多分にもれず、私は、「結局のところ、ジェンダーってナンなのでしょうね」、と、宣っている。

 理解できていたようでいて、実際にはナニも理解なんてできていないがゆえの、この、毎度毎度繰り返される、私の問い掛けなのである。

 そんな私にAくんは、ほんの少しの沈黙のあと、やはり、と、いつもの如く、愚かなる人類がつくり賜うた愚かなる社会の格差について、ユルリと語り始める。

 「優位と劣位、だな」

 「優位、と、劣位、ですか」

 「そう。たとえば、ごく身近なところで、腕力や体力や学力や容姿、さらに、障がい、疾病、さらにさらに、家柄、血筋、国籍、人種、宗教、・・・挙げ出すとキリがないが、そんな中の一つとして、ピリピリとソコにあるのが、性別、なんだろうな。本来ならば、そういったモノ全てを取っ払った素の個人がどうであるのか、が、重要であるはずなのに、むしろ、そういったモノでその個人を語ろうとする、そんな、とてつもなく気持ち悪いコトに、この社会は、なってしまっている、ということだ」

 たしかに、とてつもなく気持ち悪い。

 「さらにさらにさらに恐ろしいコトに、優位に立つ気持ち良さが、劣位を叩く気持ち良さにまで繋がっていく、という罪深いオマケまで付いてくるものだから、ホントに厄介なんだ」

 劣位を叩く気持ち良さ、か~。・・・

 「ナニナニはコウあるべき、コウあらねばならぬ、とか、コウでないことが問題、だからダメなんだ、とか、という、そんな上から目線の、根強い差別意識に裏打ちされた独善的なセリフたちが幅を効かせているのもまた、劣位を叩くダークな気持ちの良さのなせるワザなのかもしれないな、おそらく、いや、きっと」

 どこまでも果てしなく気持ち悪い、その、ナンともカンともな差別の闇に、いつものように、繰り返し繰り返し、ウンザリする。(つづく)