はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と十二
「マダ ソンナコト イッテイルノカヨ」②
「法に背き、不正に手を染めたとしても」
えっ。
で、出たな、Mr.唐突。
「大抵は大目に見てもらえる。役職を外されたり離党を強いられたり、みたいなコトはあっても、ソレって、全然、法の裁きじゃねえし」
たしかに、Mr.唐突が言うように、ソレは、法の裁きではない。
「そうした不正を、本気で究明していこう、などとは、サラサラ、思ってなんかいないのだろう」
思ってなんかいないだろうな。
「ただ、ひたすら、世間が、そのコトに興味がなくなって、忘れ去る、忘れ去ってくれる、その時を、待っているとしか思えないんだよな。というか、ひょっとしたら、世間は、そんなモノに、そもそも、ソレほど興味なんてないのかもしれない」
「私も、そう思います。そのおかげで、あの人たちって、不正を、何度も何度もヘラヘラと繰り返していますもんね」
「繰り返しているよな~、イヤになるほどヘラヘラと」
「ソレぐらい、世間は、悲しくなるほど忘れっぽい、ということなんでしょうね」
「そう、忘れっぽい。悲しくなるほど忘れっぽい。だから、その度に思い出すわけよ。口ずさみたくなるわけよ。わかる?」
なるほど。
で、あなたの過去など知りたくないの、か~。
今宵3度めの熱唱をムゲに阻んでしまったこと、ほんの少し、後悔する。ほんの少しだけれど。
「まだ、ナニも、解明なんてされていないのに。まだ、誰も、法に則って公正に裁きなんて受けていないのに。ズルズルと、ズルズルと、世間は、『まだそんなコト言っているのかよ。他にもっと大事なコトがあるだろ』みたいなコトに、どうしてもなっちまう。コレって、いったい、ナゼなんだろうな」
ナゼなのだろう。
コレもまた、立場主義?
コレもまた、柵(シガラミ)?
コレもまた、フェッター?
コレもまた、鉄の鎖?、拘束具?
・・・なのだろうか。
(つづく)