ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1313

はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と四十四

「カネ? キン? アルイハ コン?」

 そういえば、「金(カネ)」という漢字、某検定協会主催の「今年の漢字」に、ナゼか、何度も選ばれているという。

 「毎年、年末に、世相を漢字一字で表すイベント、あるじゃないですか」

 「あ~、『今年の漢字』。あの清水寺貫主(カンシュ)さんがoutdoor でダイナミックに書くヤツね」  

 「そう、ソレです。その『今年の漢字』にカネカネカネの金(カネ)が、最も多く選ばれているらしいのです」

 「ほ~」

 「ナゼ、ナゼこの漢字が何度も選ばれるのか。ソコのトコロが、どうしても私にはナゾで」

 「ナゾ、ね~。たしかにナゾっちゃ~ナゾかもな。漢字なんて、星の数ほどあるわけだから」

 「そう、そうなんです。星の数ほどあるのに、ナゼか何度も選ばれる」

 「カネカネカネの『金(カネ)』はその漢字まで、人を、魅了する、ということか」

 漢字まで人を魅了する、とは、いったい。ソコのトコロが、まだ、ナゾのままだ。

 「でも、ナゼ、漢字までもが、ソコまで、人を、魅了してしまうのでしょう」

 「ん~・・・。やっぱり、ナンやカンや言っても結局は、カネなんだろうな、ピーポーたちの関心事は」

 やはり、カネ、か~。

 しかし。

 「とはいえ、ダレもが『カネ』と読むわけではないですよね」

 「カネと読むとは限らない、か。それもそうだな。むしろ、一般的には『キン』か」

 キン。キン、かも。

 「たしかに『キン』かもしれませんね。金銀の金。金メダルの金」

 「税金、借金、返済金、そして、学生たちを苦しめ続けている奨学金、もな」

 あ~、奨学金

 「アレって、ほとんど教育ローンですからね。で、ソコに、『コン』まで加わるわけでしょ」

 「コン。こん、金剛力士像。金平糖

 お~、金平糖

 「砂糖の固まりなのに妙に美味しいですよね、金平糖って。結構、好きなんです。で、さらに、先日、参拝させてもらった金比羅さんも、能楽の流派の一つ、金春(コンパル)さんも」

 「金輪際(コンリンザイ)、君にカネを貸すことはないから。なんてのもあるぜ」

 「つまり、カネに陰と陽の二面性があるように、漢字の『金(カネ)』にも、二面性、どころか、三面性も四面性も、あるということですね」

 「だから、その時々の様々な世相の受け皿になり易い、ということなんだろうな」

 なるほど。

 「そうかもしれませんね」

 モヤモヤッとしていたナゾが、一気に解けたような気がする。

 「たとえば、オリンピックで選手たちが頑張った。金(キン)。ベルリン国際映画祭で最優秀作品賞を受賞した。金。天候にも恵まれ、美しい金環日食が見れた。金。みたいな」

 「そうそう、そういう感じ。不況によって金の価格が高騰した。金。年金システムが行き詰まってきた。金。問題はありまくるが金利なんてそう簡単には上げられない。金」

 「政治家たちが裏金をつくった。金」

 「企業団体献金の問題点が浮き彫りに。金」

 「またしても税金が上がりそうだ。金」

 「ついでに社会保険料も物価もナニもカも上がって。その割には賃金は上がらず。そうしたコトも要因なのか、安易に、短絡的に、闇バイトでカネを稼ごうとして。金だ」

 ふ~。

 なんだか無性に情けなく、悲しく、なってくる、金、金、「金」だな。(つづく)