はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と四十四
「カネ? キン? アルイハ コン?」
そういえば、「金(カネ)」という漢字、某検定協会主催の「今年の漢字」に、ナゼか、何度も選ばれているという。
「毎年、年末に、世相を漢字一字で表すイベント、あるじゃないですか」
「あ~、『今年の漢字』。あの清水寺の貫主(カンシュ)さんがoutdoor でダイナミックに書くヤツね」
「そう、ソレです。その『今年の漢字』にカネカネカネの金(カネ)が、最も多く選ばれているらしいのです」
「ほ~」
「ナゼ、ナゼこの漢字が何度も選ばれるのか。ソコのトコロが、どうしても私にはナゾで」
「ナゾ、ね~。たしかにナゾっちゃ~ナゾかもな。漢字なんて、星の数ほどあるわけだから」
「そう、そうなんです。星の数ほどあるのに、ナゼか何度も選ばれる」
「カネカネカネの『金(カネ)』はその漢字まで、人を、魅了する、ということか」
漢字まで人を魅了する、とは、いったい。ソコのトコロが、まだ、ナゾのままだ。
「でも、ナゼ、漢字までもが、ソコまで、人を、魅了してしまうのでしょう」
「ん~・・・。やっぱり、ナンやカンや言っても結局は、カネなんだろうな、ピーポーたちの関心事は」
やはり、カネ、か~。
しかし。
「とはいえ、ダレもが『カネ』と読むわけではないですよね」
「カネと読むとは限らない、か。それもそうだな。むしろ、一般的には『キン』か」
キン。キン、かも。
「たしかに『キン』かもしれませんね。金銀の金。金メダルの金」
「税金、借金、返済金、そして、学生たちを苦しめ続けている奨学金、もな」
あ~、奨学金。
「アレって、ほとんど教育ローンですからね。で、ソコに、『コン』まで加わるわけでしょ」
お~、金平糖。
「砂糖の固まりなのに妙に美味しいですよね、金平糖って。結構、好きなんです。で、さらに、先日、参拝させてもらった金比羅さんも、能楽の流派の一つ、金春(コンパル)さんも」
「金輪際(コンリンザイ)、君にカネを貸すことはないから。なんてのもあるぜ」
「つまり、カネに陰と陽の二面性があるように、漢字の『金(カネ)』にも、二面性、どころか、三面性も四面性も、あるということですね」
「だから、その時々の様々な世相の受け皿になり易い、ということなんだろうな」
なるほど。
「そうかもしれませんね」
モヤモヤッとしていたナゾが、一気に解けたような気がする。
「たとえば、オリンピックで選手たちが頑張った。金(キン)。ベルリン国際映画祭で最優秀作品賞を受賞した。金。天候にも恵まれ、美しい金環日食が見れた。金。みたいな」
「そうそう、そういう感じ。不況によって金の価格が高騰した。金。年金システムが行き詰まってきた。金。問題はありまくるが金利なんてそう簡単には上げられない。金」
「政治家たちが裏金をつくった。金」
「企業団体献金の問題点が浮き彫りに。金」
「またしても税金が上がりそうだ。金」
「ついでに社会保険料も物価もナニもカも上がって。その割には賃金は上がらず。そうしたコトも要因なのか、安易に、短絡的に、闇バイトでカネを稼ごうとして。金だ」
ふ~。
なんだか無性に情けなく、悲しく、なってくる、金、金、「金」だな。(つづく)