はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と二十八
「カガイシャガワ ノ チョウキセン ト ヒガイシャガワ ノ タンキケッセン ト」
この国のピーポーたちの「トンでもなく忘れっぽい」という特異な気質ゆえ、被害者側は、ナニがナンでも短期決戦で決着を付けるぐらいの意気込みで臨まなければならない。ナゼなら、加害者側は、ナニがナンでも長期戦にもち込もうとするからだ。長期戦にさえもち込めば、たいていの場合、スルスルと、世間の興味は薄れ、気が付けば忘却の彼方。もう、誰も、そんなコトに関心を示さなくなる。
「全てがそうだとは思いませんが、でも、この国って、加害者側は、長期戦にさえもち込めば逃げ切れる、って、思っていませんか」
「長期戦に、かい」
「どうせ、皆、すぐに、興味がなくなって、どうでもよくなるだろうし、みたいな」
「忘れっぽいからな~」
「まさに、先ほどの、沈黙は美徳なり。火に油を注ぐことになりかねないようなコトは語らず、ダンマリを決め込んでズルズルと時間稼ぎ。そうこうしているうちに、皆の頭の中からフェードアウト。はじめからナニもなかったかのようにキレイサッパリ消えてしまう」
「消えてしまうよな~」
「でも、こんな戦術、ダメですよね」
「ダメだろ、もちろん。だけどだ、大いなる権力を握っていればいるほど、その戦術で逃げ切れそうだよな」
「悔しいけれど、私も、そう思います」
「だから、だから忘れちゃダメなんだ。とくに、圧倒的な強者が起こしたトンでもないコトは、絶対に」
(つづく)