ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1093

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と二十四

「ワザトジャナイ タマタマ ナンダ」

 「Je n'ai pas fait  exprès」

 「はぁ?」

 「I didn't mean to」

 「あ、あ~、not mean to 。ナニナニするつもりではない、ですね」

 「mean 、には、『イジワル』なんて意味もあるらしいからな」

 イジワル、か~。

 ナンか、面白いな、それ。

 「I didn't mean to。『そんなつもりでやったわけじゃない、わざとじゃないんだ、たまたまなんだ』、が、政治の世界やらスポーツの世界やらで、ちょっと話題になっているだろ」、とAくん。

 わざとじゃない、たまたま、が、話題に?

 あっ、あ~。あのコトやら、あの、コトやらのことだ。間違いない、きっとそうだ。

 「そういうのって、どうしても、感情的な対立を生みがちですよね」

 「感情的な、対立?」

 「わざとじゃない。に、対して、わざとだろ。みたいな」

 「あるな、それ、ある。悲しいかな、『わざとじゃないのにね、タイヘンだ。心中お察しいたします』、とは、なかなかならない」

 「ソレって、ほとんど、敵対している、という理由によるものですよね。敵対しているから、相手を叩けるモノはナンでもカンでも使う」

 「場合によっては、『たまたまならナニをヤッてもいいってコトなんだな』、『じゃ、わざとじゃなくヤラせてもらうよ。わざとじゃないからな、コレは』みたいな論調まで出てきたりしてしまう。その稚拙感。破綻感。ギスギス感。ハンパないよな~」

 たしかに、ハンパない。

 「トにもカクにも、今、ココで、自信をもって言えるコトは、ただ一つ。子どもたちの教育には極めて悪い、悪い見本、だというコト」

 たしかに、目一杯、悪い。

 客観的に、冷静に、凝視してみれば、自ずと真実は見えてくるはずなのに、見ようとしない。ナニがナンでも敵は叩く、潰す。という、この姿勢、当然のごとく、子どもたちには見せられない。

 「ましてや、政治家。ましてや、スポーツマン。ダメだろ、ソレ、ダメすぎだろ。教育上、マジで」

 Aくんの怒りに満ち満ちた結論に、ふと、先ほどの「mean 」のあの意味が、蘇る。

 イジワル。

 そう、その姿勢、メチャメチャ、イジワル。  

(つづく)