ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1192

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と二十三

「オヤガチャッ!」

 その順位にドレほどの意味があるのか甚だ疑問だが、と、前置きした上で、Aくん、いつのまにか、アジアで二桁台一歩手前とあいなった、この国屈指の、あの、某有名大学について、ユルリと語り始めた。

 「僕が学生だった頃には、もう、既に、ジャブ程度にその兆候が見え始めていたんだよね」

 アジアで二桁台一歩手前の、その兆候?

 「学生の親の年収もまた、他の追随を許さず、トップ。学費が高い私学なら理解もできるが、そうではない国立の大学の親の年収が、ナゼ、トップなんだよ」

 おそらく、40年ほど前のコトなのだろうけれど、既に、その時点で、そうだったのか。しかし、そのコトが、どう、その兆候に繋がっていくのだろう。

 「つまり、金持ちの親たちによる圧倒的な初期投資によって、徹底的に鍛え上げられたクイズに強い子どもたち、の、大学になってしまったということだ」

 鍛え上げられた、クイズに強い子どもたち、か~。

 しかしながら、まだ、繋がらない。

 「クイズに強い、は、残念ながら、本当の意味での『賢い』ではないだろ」

 あ~。

 「幼い時には幼い時でなければ学べない大切なモノがあるはず。にもかかわらず、理屈抜きに、ただひたすら、漠然と、あなたの将来のために、と、この国屈指の高学歴を目指す」

 う、わ~。

 「そんな、幼い頃から親に投資され続けてきた学生に、はたして、ナニができるか。どうしても守りに入るんじゃないのか、思い切ったコトにチャレンジなんてできないんじゃないのか、ってね」

 なるほど。

 しかし、まだ、繋がらないな。 

 「そのコトが、ナゼ、その兆候に繋がるのですか」

 思い切って尋ねてみる。

 「親の年収なんて関係なく、というか、親なんて関係なく、ごく普通に公教育でシッカリ学べて、学んで、そして、もっともっと学びたいというヤングピーポーは、ごく普通に、受験し、進学できる、進学する。そんな感じなら、きっと、アジアで二桁台一歩手前なんてことにはならなかったはずだ」

 あ、あ~、そういうことか。

 「子どもたちは『社会の子』。嫌いな新語ランキングのベスト3に入るあの『親ガチャ』なんてモノに、子どもたちが振り回されているようじゃ、この国の未来は絶望的に暗いということだ」

 なるほど、なるほどな~。

 子どもたちの能力が、可能性が、置かれている環境によって、摘み取られ、奪い取られている、ということか。

 う~ん・・・。

 もちろん、ソレだけが、二桁台一歩手前の理由ではないだろうけれど、金持ちたちの中だけで競い合ったところで、そんなもの、高(タカ)が知れている。しかも、育まなければならなかった大事なモノを放棄してきたのだ。申し訳ないが、ナニやらトンでもない危うさを、ソコに、どうしても感じてしまうのである。Aくんが言おうとしているコトは、おそらく、そういうコトなのだろう。(つづく)