ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.973

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と四

「ウメラレソウニナイホド フカイ ミゾ」①

 「数多ある認定NPO法人。ホントに頭が下がるよな~」

 NPO法人、か~。

 「NPO法人によって救われた人生、命、幸せ、数えきれないほどあるでしょうね」

 「だろうな。あっ、そういえば、少し前に、ある記事を目にしたんだよね」

 ん?

 おもわず、ググッと身を乗り出す。

 「50年ほど前に、学童保育を立ち上げた女性の記事」

 「50年前、ですか」

 「そう、50年前。50年前なんて、少なくとも僕は、僕自身のコト以外ナニも見えていなかったと思う」

 「私は、未だにそうです。ナニも見えてなんかいません」

 「ま、そう徒(イタズラ)に、自分を責めなさんな。多分、みんな似たり寄ったり、周りのコトなんて誰も見えちゃ~いないから。でも、彼女には見えていた。ほとんどの人には見えない、見ようともしない、そんな周りの、その深いトコロまでもが。そして今も、彼女の目にはシッカリと見え続けているということなんだろうな」

 50年前からズッと凄まじい眼力で取り組み続けてこられたその女性に、興味がグングンと湧いてくる。 

 「しかも、ソコで立ち止まるのではなく、次の一歩、さらに一歩、さらにさらに、と、子どもたちと共に力強い足取りで、ズッと歩んできたわけだからな~」

 子どもたちと共に歩んできた、か~。

 存じ上げないだけで、この星のそこかしこには、同じように凄まじい眼力と力強い足取りで、子どもたちと共に歩み続けているスーパーピーポーたちがいるのだろうな、きっと。

 「その女性が、ある自治体の考え方にモノ申しているわけ」

 ん?

 「ナニか理不尽な圧力でもあったのですか」

 「らしい」

 ん~。

 なんとも悲しいコトだが、地道に頑張っておられるそうしたピーポーたちに理不尽な圧力が掛けられること、それほど珍しいことではない。

 「ナニがあったのですか」

 「全く知らなかったのだが、その記事によれば、ある自治体の『子どもの家事業』なるものが、10年ほど前に廃止されたらしい」

 やっぱり。

 「それゆえ、補助金が大幅に削減された、と、書かれていたんだけれど。その廃止理由が、僕にはどうしても理解できなかったんだよな~」

 「どうせ、『聖域なきコストカット』とかじゃないのですか」

 「その方が、まだ、わかりやすかったかもしれない。誰が言い出したのかはわからないけれど、その理由とは、お金を払って学童に通う家庭と、無償の『子どもの家』に通う家庭が存在するのは不平等、ということらしいんだ。しかし、僕には、ナゼ、ソレが、不平等なのかが全くもってわからないわけ」

 ん~・・・。

 お金を払って学童に通うことが損?

 無償で子どもの家に通えることが得?

 お金を払う家庭が損?

 払いたくても払えない家庭が得?

 損と得があることが不平等?

 そもそも、損ってナニ?、得ってナニ?、損得ってナニ?、不平等ってナニ?

 たしかに、ナゾがナゾ呼ぶナゾナゾワールド。私ごときでは、到底、そのナゾを解き明かすことなどできそうにない。(つづく)