ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1166

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と九十七

「キホンテキジンケン ハ オカスコトノデキナイ エイキュウ ノ ケンリ」

 「よほど、『人権』というモノが、気に食わないのだろうな」

 ん?

 「人権嫌いのあの人たちらしい、草案、だということだ」

 んん?

 「僕はね、申し訳ないけど、どうしても、この国は、ヤヤもするとズルズルと、悪魔の道を直(ヒタ)走ってしまう危険性を孕(ハラ)んでいると」

 ん、ん~。

 「さらに、ソレは、権力者に限った話ではないと」

 権力者に限った話ではない、か~。

 「それゆえに、憲法は、限りなく、最後の砦(トリデ)のようなもの、だと、思っているわけ」

 あ、あ~。

 おそらく、あの、改憲草案のコトだな。

 そのズルズルと、という感じ、わからなくはない。だけに、あの草案が放つ臭いに、私も、ナニやら底知れぬヤバさは抱いている。

 「にもかかわらずだ。97条、『基本的人権は侵すことのできない永久の権利』、削除だぜ」

 さ、削除?

 全く気付かなかった。

 「ナニを思い、ナニを考え、どのツラ下げて、削除などと宣えてしまうのか」

 削除、とは・・・。

 「こんなモノがあったのでは、イザという時の邪魔になる、とでも、思っているのだろうな」

 ジャ、ジャマ!?

 「イザという時の、ジャマ、ですか」

 「そう。つまり、圧倒的な権力を握るシモジモじゃないエラそうなピーポーたちにとって、基本的人権なんてものは、自分たちがその強大な権力を行使する際の足手纏(マト)い以外のナニモノでもない、と」

 な、なんという、傲慢。

 「確実に、国民を、権力の支配下に置きたいのだろう」

 なんという、支配欲。

 「しかも、そういった本音は、見事なまでに包み隠されていて、大規模災害時に、世界規模の疫病蔓延時に、よりスムーズに、国が皆さまをサポートできるように、などと、平然と、涼しい顔をして宣うわけよ、あの人たちは」

 あっ。

 あの、忌野清志郎の、「地震のあとには戦争がやってくる」だ。

 地震さえも、疫病さえも、自分たちの本音を憲法の中に埋め込むために利用する。おそらく、改憲草案に、漠然とながらも抱いた底知れぬヤバさ、は、まさに、ソコから臭ってきたモノだったのだろう。

 基本的人権

 その、侵すことのできない永久の権利を、マヤカシの言葉にソソノカされたとはいえ、最終的には我々の意思で、万が一にも侵してしまったとしたら、その時は、弾みが付いて、一気に、忌野清志郎が言い残してくれた言葉のように、戦争に、突き進むに違いない。

 地震のあとには戦争がやってくる。

 地震のあとには、戦争が、やってくる。

(つづく)