はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と九十七
「キホンテキジンケン ハ オカスコトノデキナイ エイキュウ ノ ケンリ」
「よほど、『人権』というモノが、気に食わないのだろうな」
ん?
「人権嫌いのあの人たちらしい、草案、だということだ」
んん?
「僕はね、申し訳ないけど、どうしても、この国は、ヤヤもするとズルズルと、悪魔の道を直(ヒタ)走ってしまう危険性を孕(ハラ)んでいると」
ん、ん~。
「さらに、ソレは、権力者に限った話ではないと」
権力者に限った話ではない、か~。
「それゆえに、憲法は、限りなく、最後の砦(トリデ)のようなもの、だと、思っているわけ」
あ、あ~。
おそらく、あの、改憲草案のコトだな。
そのズルズルと、という感じ、わからなくはない。だけに、あの草案が放つ臭いに、私も、ナニやら底知れぬヤバさは抱いている。
「にもかかわらずだ。97条、『基本的人権は侵すことのできない永久の権利』、削除だぜ」
さ、削除?
全く気付かなかった。
「ナニを思い、ナニを考え、どのツラ下げて、削除などと宣えてしまうのか」
削除、とは・・・。
「こんなモノがあったのでは、イザという時の邪魔になる、とでも、思っているのだろうな」
ジャ、ジャマ!?
「イザという時の、ジャマ、ですか」
「そう。つまり、圧倒的な権力を握るシモジモじゃないエラそうなピーポーたちにとって、基本的人権なんてものは、自分たちがその強大な権力を行使する際の足手纏(マト)い以外のナニモノでもない、と」
な、なんという、傲慢。
「確実に、国民を、権力の支配下に置きたいのだろう」
なんという、支配欲。
「しかも、そういった本音は、見事なまでに包み隠されていて、大規模災害時に、世界規模の疫病蔓延時に、よりスムーズに、国が皆さまをサポートできるように、などと、平然と、涼しい顔をして宣うわけよ、あの人たちは」
あっ。
地震さえも、疫病さえも、自分たちの本音を憲法の中に埋め込むために利用する。おそらく、改憲草案に、漠然とながらも抱いた底知れぬヤバさ、は、まさに、ソコから臭ってきたモノだったのだろう。
その、侵すことのできない永久の権利を、マヤカシの言葉にソソノカされたとはいえ、最終的には我々の意思で、万が一にも侵してしまったとしたら、その時は、弾みが付いて、一気に、忌野清志郎が言い残してくれた言葉のように、戦争に、突き進むに違いない。
地震のあとには戦争がやってくる。
地震のあとには、戦争が、やってくる。
(つづく)