ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1086

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と十七

「コクエキ ナクシテ ジンケン ナシ」

 「国益なくして人権なし!」

 「えっ」

 ど、どうしたのだ、Aくん。

 「国益を損なう恐れさえある人権ってヤツほど、厄介なモノはない、ということだ」

 く、狂ったのか、Aくん。

 「ま、待ってくださいよ。民主主義とは、むしろ、人権なくして国益なし!。では、ないのですか」

 「とくに、弱き者たちの人権ごとき、に、よって、この国が振り回されることなど絶対にあり得ない」

 酔いのせいもあろうかと思うが、やっぱり、狂ったか、Aくん。

 するとAくん、想いっ切り面舵(オモカジ)いっぱい、踵(キビス)を返す。

 「と、宣ったりするわけよ。圧倒的な権力を握る強者(キョウシャ)たち、ってのは」

 あ、あ~。

 一気に、ホッとする。

 「先ほどの、働かせる側と働く側との関係性と同じで、その両者の力関係が対等であるなら、まだ、ギリギリセーフかな、とは思うけれど。どう考えても、いつだって、軽んじられがちなのは、国益ではなく、弱き立場の人権の方だろ、違うかい」

 違わない。

 「君が言うように、人権なくして国益なし。と、思うぐらいで丁度いいのかもな」

 ふ~。

 Aくんにはホッとしたけれど、「国益なくして人権なし」という言葉は、そのままズシンと心の奥底にメリ込んだままで、全然ホッとなんてできない。

 圧倒的な権力を握る強者(キョウシャ)は、権力者は、ヤタラと「国益のため」と宣いつつ、あの人たちにとって好ましくない、不都合な、そんな弱き立場の人権を、いとも簡単に、ほとんど躊躇することもなく、フッと吹き飛ばしてしまいそうで、恐ろしくなる。

 「そもそも、その、国益ってヤツそのものが、怪しんだよな~」

 ん~。

 たしかに、あの人たちが宣う「国益」とは、いったい、ナンなのだろう。弱きピーポーたちを犠牲にした国益など、絶対に、あり得るはずがないのである。(つづく)