はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と二十二十三
「ジンケン ハ ジンメイ!」
「人権」という言葉に、あまりいいイメージをもたれていないシモジモじゃないエライ人たちが、数多くおられるような気がする。
ナゼだろう。
「ナゼ、権力者って、人権という言葉を毛嫌いしがちなのでしょう」
「権力者ね~、・・・」
「もちろん、皆が皆、というわけではないと思いますが」
するとAくん、呆れ果てるように、吐き捨てるように、「権力者にとって『権』はチカラ、『権』はイノチ。自分たちのその『権』が、損なわれるとでも思っているんじゃないの」、と。
権力者の「権」が、損なわれる?
「ま、権力者に限ったコトじゃ、ないのかもしれないが」
権力者に限ったコトじゃ、ない?
「圧倒的に弱者の、そんな人権なんて、ただ五月蝿(ウルサ)いだけの邪魔臭いモノ以外のナニモノでもない、って、思っている人、結構、いるような気がするんだよな」
弱者の権利が、ただ五月蝿いだけの、邪魔臭いモノ?
「そうそう、思い出した。ドチラかというと反体制的で、批判的精神旺盛な僕の知り合いが、入管法の改定は別にいいんじゃないかな~、って宣ったわけ」
「べ、別にいいんじゃないかな~、ですか」
「ナゼだよ。と、尋ねると、ソレって、ほとんど関係ないでしょ、私たちには。だとさ」
「わ、私たちには、関係ない、ですか」
「つまり、圧倒的な弱者の人権なんて、関係ない。どうでもいい。って、コトなんだろう」
関係ない、どうでもいい、か~。
「人権は人命。人の命。全ての人が人として人らしく生きる、生きていける、そのための命をナニがナンでも守る。という根本の部分が、ストンと抜け落ちてしまっているんだよな、アイツの頭の中から」
「でも、結局は、理解してくれたのでしょう、その人」
「ダメダメ、頑(カタク)なにダメ。脳ミソが、未だに鎖国状態なんだろうな。かなり酔っていたからとは思うけれど、『じゃ、この国に来なきゃ~いいじゃないですか』だもんな~。なんか悪酔いしそうだから早々に引き揚げたよ」
人権は人命、か~。
人の命に格差をつけて差別し始めたら、そして、ソレが正しきコトと皆が思い始めたら、もう、この国は、この世界は、終わってしまいそうな気がする。(つづく)