ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.972

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と三

「ヤッパリ トメラレナイ」

 平和ボケ気味の私たちは、たとえば、戦争に突き進む大国のその国民に対して、エラそうに、「ナニをやっているんだ。もっとシッカリと反対の声を上げて、その暴走を国民一丸となって食い止めなければダメじゃないか」などと宣ってしまいがちだ。圧倒的な権力を握る圧倒的な強者に対して、その国の一般ピーポーたちが声を大にして訴えることの難しさは、そして、その声によって食い止めることの難しさは、この、限りなく平和ボケっぽい私たちには、なかなか理解できないことなのかもしれない。

 しかしながら、その難しさを、やっと、なんとなくながらも感じることができた、ような気がする。

 やっぱり、止(ト)められない。 

 クソッ、やっぱり止められないのである。

 「反対する声が、大きく賛成を上回っていたとしても、結局、やっぱり止められない。ということを、思い知らされた気がします」、と私。

 いかにも、あ~、あのコトね。という顔を見せたあと、Aくんは、思いの丈(タケ)を一気に愚痴り始める。

 「その一点だけを見れば、たしかに多くのピーポーたちに反対されているわけだけれど、結局、選挙では、そんなコトぐらいではビクともしない岩盤支持層に加えて、『ヨソよりはマシみたいだから』などと宣いつつ一票を投じてくれる、そんな消極的支持層なんてのもいてくれたりするものだから、ま、いいか、とりあえずこの件はゴリ押ししておくか~、みたいなコトになっちゃうのだろうな~」

 たしかにその通り。

 選挙なんて、余程のコトがない限り、いつだってそんな感じなのである。

 「たいていのコトは、すぐに忘れてしまいがちですしね」

 「忘れるよね~、ホントにすぐに忘れる。過去に囚(トラ)われずに、未来に向かって突き進め~。は、必ずしも悪いというわけじゃないけれど」

 「けれど、この今を蔑(ナイガシ)ろにして、明るい未来などありはしないでしょ」

 「ありはしない。もちろんありはしないけれど、あんなこんなで、結局、こんな声を上げやすい国でさえ、それでもやっぱり止められない。どうあがいても、こんな一般ピーポーの力程度では、そう簡単には止められないわけよ。つまり、つまりだ。あえてココで強調しておきたいことは、ヨソの国の、その、置かれている厳しい現状についてナニも知らないにもかかわらず、その国のピーポーたちに、エラそうにツベコベ言ったりしておれる立場でも場合でもないだろ、ってことなんだ」

 なるほど、なるほどな~、とは思う。

 とは思うが、ナニよりも恐ろしいのは、こうした、ジワジワと静かに、無自覚に、広がっていく「やっぱり止められない』系の絶望的な無力感、で、あるような気がしてならないのである。(つづく)