ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.983

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と十四

「オヤガコニ モンダイ」

 おそらく、ナンらかの、歪んだ下心が強烈な圧力となって、その名称を、土壇場で変更せしめたのであろう、あの「無理やり『家庭』へばり付き」問題で、先ほども、ちょっと盛り上がったわけだけれど、と、言い忘れたコトでもあるのか、もう一度、ユルリとその話題についてぶり返すように語り始めた、Aくん。さらに、「悩める子どもたちに唾を吐きかけるような、この『無理やり家庭へばり付き』問題に、もっと怪しげな『無理やり我が子に』問題までもが被(カブ)さるように絡み始めて、もう、この世は、厄介が厄介を呼ぶ厄介厄介ワールドや~」、と、妙なイントネーションで雄叫びまで上げ出す始末。この問題に対する彼の憤りは、まだまだそう簡単には収まりそうにないようだ。

 こども家庭庁。

 たしかに、青天の霹靂(ヘキレキ)のごとくの名称変更であった。ソレはソレで驚きであったのだけれど、ソレにもまして、それほど昔のコトでないにもかかわらず、もうスッカリ忘れ去られようとしているピーポーたちの記憶の賞味期限の短さに、驚きやら失望やらがグチャッと潰されたような、そんなナンとも言えない思いを抱いているのは、はたして私だけだろうか。

 「たとえば、目に見えるような、体罰的な、暴力的な、そんなモノではないのだけれど、親のものの考えが、価値観が、言動が、著しく常軌を逸している、としか思えないような場合、そうした中で悶々と悩める子どもたちは、どのようにしてソコから逃れればいいのか」

 そう、静かに語り続けるAくんのその目は、いつも以上にマジで、危機感さえも漂わせている。

 「そんな時にだ。日本古来の理想的な家庭像とは、とか、本来の家庭の役割とは、とか、今求められるより良い家庭とは、とか、に、どんな意味があるのか。一刻も早く、まずソコから逃げる、逃げ出す、そのためのアシストを、国を挙げてしていかなければならないはずなのに、『こども家庭庁』だからな~。一体全体、ナニ考えてんだか。そもそも、そもそもだ。その日本古来って何時(イツ)のコトなんだよ。どうせ明治維新からのあの感じを日本古来って宣っているんだろ、としか、思えないんだよな~」

 余ほど、こどもの後ろに「家庭」がへばり付いてしまったことに、その罪の重さを感じているのだろう。Aくん、ジワリジワリとクレッシェンドにボリュームアップしていく。

 親が子にする、親主導の「良かれと思ってする」コトが、不幸にもトンでもないほど大きな問題を孕(ハラ)んでいるという時、子どもたちは、いったい・・・。

 Aくんの目に重く漂っていた危機感は、まさにソコから湧き上がってきたモノであったのかもしれない。(つづく)