ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.963

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九十四

「セイジリヨウ ノ リュウサジゴク」

 「よくもまあ、ナンでもかんでも政治利用してしまおう、と、するよな~」

 「政治利用、ですか」

 「そう、政治利用。場合によっては人の死までも、都合よく、政治利用してしまうのだから、恐れ入るよ、まったく」

 人の死、まで、政治利用か~。

 「それぞれが、それぞれの思いや考えの中で、その死を弔(トムラ)う。その、あくまでも一人ひとりの、自然発生的な『弔意(チョウイ)』という気持ちこそが大事なのであって、その弔意が、政治的に強要されることも利用されることも、絶対にあってはならないはずだろ。にもかかわらず、妙に堂々と政治利用だ。あげくの果てには、『弔問外交はコスパがいい』などと宣い出す者まで出てくる始末。コレって、いったい、どういうコトなんだと思う?」

 「う~ん・・・。政治家の、政治家のサガなのでは、ないでしょうか」

 「サガ?」

 「ナニもカも、政治のために使えるモノはナンでも使う。その裏側にある本音を、野望を、成し遂げるためならナンだってやる」

 「ナンでも使う、ナンだってやる、ね~。そもそも、そもそもだ。その弔意、その、弔意なんて言葉を、シモジモじゃないエライ人たちが宣い出すこと自体、政治利用なのかもな」

 弔意という言葉を宣い出すこと自体が、政治利用、か~。

 なるほど、たしかにそうなのかもしれない。Aくんも語っていたように、弔意は一人ひとりの心の中に自然発生的に沸き上がる純粋な気持ち。その気持ちは、ナニモノにも絶対に、影響されるものでも強要されるものでもない、と、私も思う。

 「おっしゃる通り、ソレ自体、政治利用なのかもしれませんね」

 「やだね~。本来、政治なるものは、そんな怪しげなモノじゃないはずなのに、なんだかいつのまにか、迂闊(ウカツ)に鵜呑みになんてしてしまったら、トンでもないコトに、タイヘンなコトに、なるような気がして仕方がないわけよ」

 タイヘンなコトに、か~。

 「ボ~ッとしていたら、アッという間にズルリズリズリズリ~ッと『政治利用の流砂地獄』に、吸い込まれてしまうかも、な」

 こ、こわっ。

(つづく)