ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.928

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と五十九

「シケイ!!」②

 そして、な、なんと、振り返りざまに、コチラに向かって2丁拳銃で発砲するかのように・・・「死刑!!」。

 あまりにもそのポーズが決まりすぎた、とでも思ったのだろうか、満面にご満悦感を漂わせつつ、「コレだよ、コレ。凄くないかい」、と。

 ナニが凄いのかは、正直、よくわからないが、破壊力は、ある。

 「破壊力はありますよね。その、切れ味の鋭いポーズもさることながら、子ども向けの漫画の主人公の決めゼリフが『死刑!!』なわけでしょ。ホントに凄まじい時代だったんだな~」

 「でもね」

 ん?

 「でも、ホントに凄まじい時代なのはドッチだ、って話なわけよ」

 んん?

 「未だに、死刑制度は手付かずのまま放置。でも、がきデカの決めゼリフは道徳的にも人道的にも好ましくない。矛盾というかナンというか、幹の部分、つまり、死刑制度そのものには踏み込まず、たいした議論もせず放っておいて、枝葉は、見た目だけはいいように剪定(センテイ)する、みたいな、そんな感じが、この社会の『今』を象徴しているような気がするんだよな~」

 ん~。

 放置されたままの、死刑制度。

 問題視される、がきデカの、「死刑!!」。

 ・・・

 この感じ、この感じは、コレ以外の様々なコトにも当てはまるように思える。

 たとえば、政治関係者によるトンでもない差別的発言があったとしよう。しかしながら、たいていの場合、その差別する心そのものにメスが入れられることはなく、言葉尻やらのその上っ面ばかりが問題視される。だから、いつだって、「誤解を与えたのであれば申し訳ない。謝罪し、撤回する」みたいな、そんな茶番会見で幕が下ろされる。

 「死刑制度に、どれほどの凶悪事件に対しての抑止力があるのか、を、今一度、検証し、問い直す。と同時に、ソレ以前に、人が人の命を合法的に奪うコトに潜む問題点にもまた、踏み込む必要があるわけだろ。違うかい。とにかくコトは、それほど単純でも簡単でもないし、当然のごとく、放っておいていいってもんでもない」

 死刑制度、か~。

 とにかく、妙に避けて通ろうとするシモジモじゃないエライ人たちのその姿勢に、ひょっとしたら、がきデカは、もっと前向きに話し合えよ、突き詰めろよ、ちゃんとやれよ、頑張れよ、というメッセージを、その決めゼリフに思いっ切りブチ込んでいたのかもしれない。

 そんなコトを考えてみたりしていたからだろうか、なんだか突然、私もやってみたくなる。もちろん心の中で、だけれど。

 

 「死刑!!」

 

(つづく)