はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と三十六
「ワルギナンテ マッタクナクテ ツイ ヤラカシテシマッタ ツレ ヲ キッテステラレル?」
「逃げを打つ」
ん?
「このセリフでもって、とりあえずダレかのせいにして逃げを打つ」
逃げを打つ?
「とくに、政治家たちの間で、もてはやされてきたオキテ破りの逃げゼリフ。ソレが」
なんと、二人揃って、ほぼ同時に。
「知ら知らなかなかったった」
そのあまりのユニゾンさが、妙に可笑しく思えて、またまた吹き出してしまいそうになる。
そう、知らなかった。知らなかった、で、ある。
ま、名言と言えば名言と、言えなくもないけれど、ドチラかというと、迷える、血迷う、の、方の、迷言か。
そんな、この逃げゼリフ。今までに何度、耳にしてきただろう。
そして、大抵は、このあとに、平然と、涼しい顔をして、秘書に任せていた、とか、事務局長に全権を委任していた、とか、が、続く。
もちろん、ナンでもカンでも守ればいいってものではないが、ソレにしても、ナゼ、コレほどまでに部下を、関係者を、守ろうとしないのだろう。ナゼ、全て私が悪いのです、と、言えないのだろう。不思議だ。
「たとえば、悪気なんて全くなくて、つい、ヤラかしてしまった、ツレを、己の保身だけのためにサクッと斬って捨てるなんてこと、できるもんかね」
できない。
そんなコト、まず、できない。
「仮に、そんなコトができる人間がいたとして、その人間に、政治を任せようとは、普通、思わんだろ」
思わない。
全く、思わない。
(つづく)