はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と五十八
「シケイ!!」①
おそらく、今なら、ちょっとしたクレームもの、かもしれないな、とAくん。
ん?、ちょっとした、クレームもの?
その、今ならちょっとしたクレームもの、なるモノを、またまた私の脳内コンピューターを使って、大急ぎでアナログ検索してはみたが、当然のごとく、サッパリ、ヒットしない。
「あの頃は、まだ、差別的な発言やらナンやらが、悪気も悪意もドコ吹く風と、大手を振って街中を闊歩していたからな~」
あ~。
良く言えば、おおらかな。悪く言えば、人の心の痛みなど知ったこっちゃない、みたいな、そんなあの頃の話のようだ。
「そんなあの頃の、理屈抜きに元気ハツラ~ツであった漫画の一つが、忘れもしない『がきデカ』。天才、山上たつひこ氏の手によるギャグ漫画の金字塔だ」
「が、がきデカ、ですか」
全くもって、初耳である。
「警察官史上初の、小学生警察官の数奇な日常を描いた物語」
へっ。
「も、ものすごい設定ですね」
「ソレが、名探偵コナンみたいな清廉潔白で、正義感溢れる少年の冒険物語なのではなくて、2頭身の、ナニかにつけてシュールな少年のハチャメチャ物語なわけ」
に、2頭身、の、シュールで、ハチャメチャ、か~。
私が知る限り、たしかにあの頃のギャグ漫画には、恐れを知らない独特なハチャメチャ感があったかも。いい悪いは別にして、そういったハチャメチャ感は、時として、悪気やら悪意やらがあるのやらないのやら、そのあたりがどうもよくわからない差別的な表現をも巻き込んで、パワフルに弾けていたような気はする。
「がきデカ以外の登場人物は皆、スッとしているのだけどね。彼だけは、安定の2頭身。その安定の2頭身から、切れ味鋭く繰り出される必殺の決めゼリフ、ソレが」
それが?
「八丈島のきょん!」
は、八丈島の、きょん!?
「と」
ま、まだある?
「死刑!!」
し、死刑!?
「死刑!!、ですか」
するとAくん、スクッと突然立ち上がり、ナニを思ったか、コチラに向けてお尻を突き出してくる。
ナ、ナ、ナニ!?
(つづく)