ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.819

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と五十

「ミル・ブキヨウデスカラス ノ ジダイ」

 ジグソーの♪スカイ・ハイで、颯爽とリングに上がる「千の顔を持つ男」、ミル・マスカラス。そのあまりのカッコよさに、ついつい見惚れてしまっていたことを覚えている。華麗なる空中戦が得意であった彼は、ホントに派手で器用なメキシカン・プロレスラーであったのである。

 でも、そんなミル・マスカラスの真逆のカッコよさを見せつけてくれていたモノがあったんだ、とAくん。あの高倉健の、生命保険かナニかのテレビCMでの一言、「不器用ですから、どうか幸せで」、が、実にクールでカッコよかった、と、振り返る。

 意訳し過ぎかもしれないけれど、つまり、つまりだ、世渡り下手な「不器用ですから」系ピーポーたちの逆側の、世渡り上手な「私、器用なので」系ピーポーたちだけが生き易い国って、星って、ナンなんだ、ということを、そのテレビCMは、遠回しにながらも、私たちに、伝えてくれていたのではないだろうか。

 不器用のナニが悪い。

 不器用だからいい。

 不器用こそが人間らしさ。 

 不器用、フォーエバー。

 今こそ、ミル・マスカラスから、屈指の不器用ヒーロー「ミル・ブキヨウデスカラス」へと、バトンタッチしてみてもいいのではないか。時代は、むしろ、もう、ミル・ブキヨウデスカラスの時代なのではないのか。

 世渡り下手ゆえに、負け組の烙印を押されてしまったピーポーたちが、ひたすら辛い思いを強いられている、という、そんな気がしてならない世相なだけに、余計、心底、そんな気がする今日この頃なのである。(つづく)