はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と四十九
「ヨウカイ ファシズムンムン」
思い出した。
ムンムンと臭い立つ邪念と欲望と暴力性が、この妖怪のもちアジ、最大のウリ、であるという。
「ファシズム」
思い切って、唐突感満載で口火を切ってみる。
おっ、という表情の、Aくん。
「しばしば、様々なタイミングで、シチュエーションで、注目される言葉であるファシズムの」
ココで、強引に分け入ってくる、Aくん。
「その、そのファシズムの申し子である、妖怪」
ソレを遮(サエギ)る、私。
「ファシズムンムン、ですよね、たしか」
おおっ、という表情の、Aくん。
「よく覚えていたな~。そう、それそれ、邪念と欲望と暴力性ムンムンの妖怪ファシズムンムン。ソイツが、あの、アドルフ・ヒトラーが、こよなく愛したオキテ破りの戦略ツール『プロパガンダ』を駆使して、ポピュリズムの渦を巻き起こす」
「プロパガンダ、ですか」
「そう、プロパガンダ。いわゆる、広告だな。コイツが、使い方一つで悪魔の戦略ツールにもなり得る、ということだ」
なんとなく、ゾワゾワとしてくる。
「情報操作で思想操作、ってことですか」
「そうそう。そして、ソコにもう一枚、インフルエンサーが加わる」
「インフルエンサー、ですか」
「歩く影響力、みたいな存在だな」
歩く、影響力?
「あの人がこんなことを言っていたよ。あの人が言っているんだから、きっと、そうなのだろう。的な、そんな感じだ」
なんとなく、フムフムと頷(ウナズ)ける。
「さらに、ソコにもう一枚」
「ま、まだ、あるのですか」
「コレが最悪、最強、かもしれない」
なんとなく、ググッと身を乗り出す。
「メディア」
あ~。またまた、メディア、か~。
「メディアそのものが、都合のいいインフルエンサーを上手い具合に使って、強大なインフルエンサー化する。コレほど怖ろしいことはないだろ」
プロパガンダからの、インフルエンサーからの、メディアからの、ポピュリズムからの、ファシズム・・・。
ふ~。なんとなく、悪寒がしてくる。(つづく)