はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と九十八
「コッカノ タメニ ナニガ デキルカダロ」
「己の意思で」
ん?
「己のために」
んん?
「頑張ってきただけなんだけれど、回り回って、結果として、国ってヤツのためにもなっていたのかもしれねえな。なら、まだ理解はできる」
んんん?
「しかし、最初から、己のコトなんかドウでもいい。国のために、国家のために、ナニができるか。を、考え、行動することこそが大事なんだ。などと、上から目線で宣われてしまうと。なんだってんだエラそうに、冗談も休み休みに言えよな。って、どうしても、文句の一つでも言いたくなる」
気に入らないナニかを思い出したのだろう。そういう場合、Aくんは、最初からフルスロットルでブッ飛ばす。
「ナニからナニまで強者の論理。弱者は黙って右向け右。などと、マジで思っているような気がして、気に喰わねえったらありゃしねえ」
気に喰わねえったらありゃしねえ、か~。
その、昭和な言い回し、なんだか、いい。
「国家のために生きている?。国家のために働く?。国家のために勉強する?。国家のために子どもを生む?、育てる?。ひょっとしたらあの人たちは、国家のために自ら命を、なんてことさえ言い出しかねない」
言い出しかねない。
なんといってもあの人たちは、人の価値を生産性で決めたがりがちだから。
人の価値は生産性か?
生産性がなければ人ではない?
生きている価値がない?
そもそも、その生産性って、いったい、ナニ?
なんだか私まで、無性に腹が立ってきた。
「たとえば、ほら」
ん?
「頼みもしていないのに、ソコカシコでイロイロと、改憲案をお披露目してくれているだろ」
改憲案?
あ、あ~、ナニがナンでも憲法を変えたい方々の、あの、改憲案。
「頼みもしていないのに、お披露目、してますね」
「アレなんて、まさに、ソレ。『国家のためにナニができるかだろ』臭がブスブスと充満。酸欠で息苦しくさえなる」
簡単にザッと目を通しただけだが、その、酸欠で息苦しくさえなる、という感じ、わかる。なぜなら、限りなくソレに近い感情、私も、リアルに抱かせてもらったからである。
ほんの少し目を通しただけでも息苦しくなるのだ。万が一にもこんなモノが日の目を見てしまったら、憲法になってしまったら、もう、息苦しい、どころか、窒息してしまうかもしれない。
「改憲の必要性を尋ねれば、時代にそぐわない部分がある、みたいな、そんな枝葉の修正っぽいことばかりを宣っていたにもかかわらず、蓋を開けてみれば、憲法の根幹、土台とも言える前文が、国民主権が、基本的人権の尊重が、平和主義が、根底からゴソッと変えられていたり削られていたりするからな。こんなのって、もう、詐欺師の手口以外のナニモノでもねえだろ」
おっしゃる通り、ナニモノでもない。
詐欺師の手口に味を占めた「小」政治家たち。まずは岩盤支持者たちを喜ばせて、ジワリジワリと人集め。票集め。金(カネ)集め。
ホント、マジ、気に喰わねえったらありゃしねえ。
(つづく)