ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.780

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と十一

「ホボヘイキ ヘイキ?」

 Aくんに負けないほどの唐突さで口火を切ってみる。

 「ノーベル賞、ザッツノーベルショー、は、平和のショー、平和の祭典、で、なければならないなどと、先ほど、エラそうに宣わせていただきましたが、宣いついでに、もう少し宣ってみてもいいですか」、と、遠慮しつつも押しの強さもまたチラチラと見せつつ、私。 

 「もちろん。ガンガン宣ってくれよ。僕はちょっと一休みするから」、とAくん。

 さすがに、彼の持論である「批判すべきことは徹底的に批判しろよ」理論を、思いっ切り展開したからだろうか、かなり、お疲れ気味のようである。

 「じゃ、お言葉に甘えて」

 私は、以前からずっと、どうしても科学の進歩を好意的に見れないままでいる。なぜなら、科学の進歩のそのほとんどが、「兵器」に、あるいは、その開発に、繋がっているように思えてならないからである。

 「どうしても、払拭できないのです」

 沈黙の、Aくん。完全に一休みモードに入ったようだ。

 「ジーピーエス(GPS)も、エーアイ(AI)も、ドローンも、ロボットも、人工衛星も、ナニも、カも、そうした便利ツールやらグッズやらのほとんどは、そもそも、ほぼ、兵器なんじゃないか、という疑念を払拭できないのです」

 一瞬、あ~、というような表情をチラリと見せた、Aくん。でも、沈黙を守ったままだ。

 「便利だ、なんて、バカみたいに喜んでいる場合ではないんじゃないか、って」

 そのまま沈黙の、Aくん。

 「兵器開発丸出しでは、あまりにもイメージが悪い。だから、イメージアップのために、その便利さを前面に押し出しての平和利用。としか、私には思えないのです」

 まだまだ沈黙の、Aくん。

 「それまでは、科学の進歩の、オキテ破りの兵器利用だと、思っていたのです。でも、実は、そうじゃなくて、むしろ、兵器の、目眩(クラ)ましの便利ツール&グッズ利用、平和利用、ではないのか、って」

 それでも沈黙の、A・・・

 「思うわけか」

 わっ。

 突如、沈黙の世界から舞い戻ったAくんに、不覚にも、またまた驚いてしまう。

 「いわゆる大国ってヤツが、開発にアレだけの大枚(タイマイ)を投入するのだから、単なる便利ツール&グッズのために、と、考えるには、さすがに無理がある、かな」

 「純粋に、この星の、理屈抜きの平和のために、などということは、まず、あり得ない、ということですか」

 「う~ん、・・・ない、ないな。悲しいことだが、まず、あり得ない。それが、その程度が、人類だ、と、いうことなのだろう」

 その程度が、人類、か~。

 少しでも油断すると、ズリズリと絶望の沼に引き摺り込まれそうになる。

 ほぼ兵器、なれど、全然平気じゃない。

 平気じゃ、ない! (つづく)