ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.870

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と壱

「キョウフノ ミ」

 「恐怖の『み』、ご存知か」、とAくん。

 「きょ、恐怖の、み、ですか」、と私。

 「そう、み、だ」

 み、・・・とは、いったい。

 「イヤミ、ソネミ、ネタミ、ウラミ、ツラミ。ソイツたちの尻尾(シッポ)にへばり付いた『み』に、いいイメージなどあろうはずがない、どころか、オドロオドロしささえ感じる」、と、語気を強めて一気に宣ってみせる、Aくん。

 あ、あ~。

 「し、しかし、ソレって、無理やりオドロオドロしい系の『み』ばかりを集めて、ズラリと横一列に並べただけで、たとえば、あけみ、きよみ、さとみ、ひとみ、ひろみ。みんな、ステキな女性たちだし」、などと、よせばいいのに、酒の力も借りてモノ申してしまう、私。

 するとAくん、「たしかに、その、君のガールフレンドたちは、間違いなくステキな女性たちだとは思うけれど」、と、優しく前置きした上で、「でも、ソレらとコレらとは、ちょっと 違うんだよな~」、と。

 ココは適当に逸(ハグ)らかして、サラリとやり過ごしてしまおうとモノ申してしまったわけだけれど、いかんせん、やっぱり、どう考えても、ソレらとコレらとは少し、いや、かなり、違う。

 それにしても、凄まじいまでの超豪華なラインナップである。

 嫌み。

 嫉み。

 妬み。 

 恨み。

 辛み。

 「み」からしてみれば、トバッチリ以外のナニモノでもない、ということになるのだろうけれど、これだけズラリと並んでしまうと、さすがに、その「み」たちからオドロオドロ臭がプ~ンと漂ってくるような気がして、不思議だ。

 「できることなら、オドロオドロしいコレらを、自分の体内から一掃させたい、と、思うのだけれど、なかなかどうして、そうは問屋が卸してくれそうにないわけよ」

 なるほど、たしかにAくんが嘆くように、一般ピーポーには難しいことなのかもしれない。それほど、恐怖の「み」は、人の体内に棲みつきやすく、それゆえ、決して、侮れない、ということなのだろう。が、しかし、この国の、この星の、未来に対して大いなる責任をもつシモジモじゃないエライ人たちまでもが、同じように、そうは問屋が卸してくれそうにないわけよ、などと、言い訳がましく宣っているようでは、この国の、この星の、未来は、新たなる恐怖の「み」たちの総攻撃にまみれまくるかのように、弛(タル)み、撓(タワ)み、軋(キシ)み、怯(ヒル)み、澱(ヨド)み、もう、到底、希望に満ちた明るい光が差し込んでくることなど、期待できそうにない。(つづく)