ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.653

はしご酒(Aくんのアトリエ) その九十四

「メラビア~ン!」②

 「言葉、というモノがあまりにも陳腐なモノに成り下がってきた、ということもあるのだろうけれど、ひょっとしたら、この国のピーポーたちの行動は、言葉以外のモノに大いなる影響を受けているのではないのか、って、このごろ思ったりするわけよ」

 言葉以外のモノに大いなる影響を、とは。

 「それが、目、で、あったり、表情、で、あったり、行動、で、あったり、といった具合にね」

 フムフム、ヤヤこしいながらもそのヤヤこしさの向こう側に、ナニやら明確なモノが見えてきたような気がしてくる。

 「ようするに、魂を家に置いてきてしまったような目で、あるいは、メッセージと真逆の行動をとりつつ、では、どんなに真っ当なイイことを宣ったところで、誰がソンな言葉に耳を傾けるだろうか。というか、傾ける気になんてならんだろ、普通。つまり、肝心要のそのメッセージが、伝わらない、響かない。どころか、その肝心要以外のメッセージの方が、むしろ伝わる、響く、というオマケまで付いてくる」

 「ソレって、もう、最悪ですよね。で、ソレゆえの、目が口ほどにモノを言う、なワケですか」

 「そう、そういうことだ。そして、さらに、実に、興味深いのは、そんな『目が口ほどにモノを言う』理論を、アメリカの心理学者、メラビアンもまた、説いている、ってこと」

 「メ、メラビアン、ですか」

 「そう、アルバート・メラビアン」

 なるほど、目が口ほどにモノを言う、も、すでに、科学的に、学術的に、立証されている、ということか。

 するとAくん、よせばいいのに、またまた前頭葉の老化の気配漂う一句を、満面にドヤ顔色を滲ませつつ、詠む。

 

 目がビア~ンと 

 口ほどにモノを言う

 メラビア~ン

 

 それなりに、マニアックな味があるような気もしなくはないが、でもやっぱり、才能はないと思う。(つづく)