はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と八十六
「スケサン カクサン」①
♪じ~んせ、い、ら、く、あ、りゃ、く~も、あ、る、さ~
「ど、ど、どうしたのですか」
Aくんが、唐突にも程があるほどの唐突さで熱唱し始めたたものだから、さすがに面喰らう。
全く、存じ上げない。
「助さんは、杉良太郎。格さんは、横内正。もちろん、みんな若かった」
なぜか、その歌だけは、なんとなく存じ上げている。しかしながら、その出所(デドコロ)であるTV時代劇、「水戸黄門」、は、縁がなかったのか、ほとんど見たことがない。
「助さんも聞きなさい、格さんも聞きなさい」
ん?
またまた全く、存じ上げない。
「もっと派手で有名なセリフもあるんだけれど、なぜか僕は、このセリフが好きなんだな~。助、さんも、聞きなさい、格、さん、も、聞き、なっ、さい」
おそらく、水戸黄門の口調を真似ているのだろうが、その元を存じ上げないので、どう反応して良いのか戸惑ってしまう。
そんな私を尻目にAくんは、ズンズンと、話の核心に突き進む。(つづく)