ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.745

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と八十六

「スケサン カクサン」①

 ♪じ~んせ、い、ら、く、あ、りゃ、く~も、あ、る、さ~

 「ど、ど、どうしたのですか」

 Aくんが、唐突にも程があるほどの唐突さで熱唱し始めたたものだから、さすがに面喰らう。

 「僕なんかはさ~、水戸黄門といえば東野英治郎、なんだよね」

 全く、存じ上げない。

 「助さんは、杉良太郎。格さんは、横内正。もちろん、みんな若かった」

 なぜか、その歌だけは、なんとなく存じ上げている。しかしながら、その出所(デドコロ)であるTV時代劇、「水戸黄門」、は、縁がなかったのか、ほとんど見たことがない。

 「助さんも聞きなさい、格さんも聞きなさい」

 ん?

 またまた全く、存じ上げない。

 「もっと派手で有名なセリフもあるんだけれど、なぜか僕は、このセリフが好きなんだな~。助、さんも、聞きなさい、格、さん、も、聞き、なっ、さい」

 おそらく、水戸黄門の口調を真似ているのだろうが、その元を存じ上げないので、どう反応して良いのか戸惑ってしまう。

 そんな私を尻目にAくんは、ズンズンと、話の核心に突き進む。(つづく)