ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1044

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と七十五

「ボクノ ナナイロカメン!」

 あるロックボーカリストが、「自分に興味を与えてくれたモノは、扉だと思って開けた方がいい」って、宣っていたんだよね、とAくん。「ホント、いいコト言ってくれるよ、まったく」と、ナニやらとても上機嫌。

 「扉の前で躊躇している者たちにとって、その言葉は、背中をドンと力強く押してくれるかもしれませんね」、と、そのロックボーカリストの発言に、私も、賛同の意を表する。

 「でね、僕が『絵を描く』ことに興味をもった、そのキッカケみたいなモノを、僕なりに、あの頃までタイムスリップして、グググググッと探ってみたわけよ」

 絵を描こうと思った、キッカケ、か~。

 たしかに、キッカケ、って、興味深い。

 ナニかをするようになった、キッカケ。ナニかにハマった、キッカケ。いいコトも、そうでないコトも、キッカケは、きっとあるに違いないだろうから。

 「場合によっては、そのキッカケで、人生が大きく変わってしまうコトもあるわけですからね」

 「そう思うと、ちょっと、怖い気もするなぁ。キッカケ、恐るべし!」

 たしかに、キッカケ、って、恐るべし。という場合も、あるかもしれない。

 するとAくん、得意の唐突感丸出しで、「七色(ナナイロ)仮面が、ホント、大好きでさ~」、と。

 へっ?

 「な、七色仮面、ですか」

 「知らない?」

 「知らないです」

 「あの頃、実写版の、数多のスーパーヒーローたちが、世界の平和のために活躍されていたのだけれど、中でも、僕は、あの、万部おねりの菩薩さんとオバケのQ太郎とを合体させたような七色仮面が、ホント、好きだった、わけ」

 「菩薩とQ太郎との、合体、ですか」

 「そう。でだ、手元に置いて、いつでも見られるように、描いたわけよ、その七色仮面を」

 あ、あ~、そういうコトか。

 「つまり、大好きなスーパーヒーローを、身近なところに置いておきたい、というその一念で、描き始めた、というわけですね」

 「だと、思うんだよな~。自分の意思で、興味があるモノを描いた、その記念すべき第一歩、ソレが七色仮面だった、ってね」

 なるほど、なるほどな~。

 そうした、ナニかを始めるようになったキッカケと、その最初の第一歩みたいなモノを、いま一度、Aくんのように、タイムマシンに乗って、探ってみるのもいいかもしれないな。(つづく)