はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と七十五
「ボクノ ナナイロカメン!」
あるロックボーカリストが、「自分に興味を与えてくれたモノは、扉だと思って開けた方がいい」って、宣っていたんだよね、とAくん。「ホント、いいコト言ってくれるよ、まったく」と、ナニやらとても上機嫌。
「扉の前で躊躇している者たちにとって、その言葉は、背中をドンと力強く押してくれるかもしれませんね」、と、そのロックボーカリストの発言に、私も、賛同の意を表する。
「でね、僕が『絵を描く』ことに興味をもった、そのキッカケみたいなモノを、僕なりに、あの頃までタイムスリップして、グググググッと探ってみたわけよ」
絵を描こうと思った、キッカケ、か~。
たしかに、キッカケ、って、興味深い。
ナニかをするようになった、キッカケ。ナニかにハマった、キッカケ。いいコトも、そうでないコトも、キッカケは、きっとあるに違いないだろうから。
「場合によっては、そのキッカケで、人生が大きく変わってしまうコトもあるわけですからね」
「そう思うと、ちょっと、怖い気もするなぁ。キッカケ、恐るべし!」
たしかに、キッカケ、って、恐るべし。という場合も、あるかもしれない。
するとAくん、得意の唐突感丸出しで、「七色(ナナイロ)仮面が、ホント、大好きでさ~」、と。
へっ?
「な、七色仮面、ですか」
「知らない?」
「知らないです」
「あの頃、実写版の、数多のスーパーヒーローたちが、世界の平和のために活躍されていたのだけれど、中でも、僕は、あの、万部おねりの菩薩さんとオバケのQ太郎とを合体させたような七色仮面が、ホント、好きだった、わけ」
「菩薩とQ太郎との、合体、ですか」
「そう。でだ、手元に置いて、いつでも見られるように、描いたわけよ、その七色仮面を」
あ、あ~、そういうコトか。
「つまり、大好きなスーパーヒーローを、身近なところに置いておきたい、というその一念で、描き始めた、というわけですね」
「だと、思うんだよな~。自分の意思で、興味があるモノを描いた、その記念すべき第一歩、ソレが七色仮面だった、ってね」
なるほど、なるほどな~。
そうした、ナニかを始めるようになったキッカケと、その最初の第一歩みたいなモノを、いま一度、Aくんのように、タイムマシンに乗って、探ってみるのもいいかもしれないな。(つづく)