はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と五十五
「ムカシノ キカイハ ツヨインデスワ」
「こんなん、もう、つくれんのですわ」
ん?
なぜか関西訛(ナマ)りで、そう喋り出した、その、テレビ画面の中のオヤジさんは、いかにも、町工場で働くその道のプロ職人、という風情のオヤジさんだったんだよな~、と、いつもの唐突感丸出しで、Aくん。おそらく、ドキュメンタリー番組かナニかを見ていた時のコトを、突然、思い出したのだろう。
「その、なぜか関西訛りのプロ職人さんは、ナニをつくっておられる方だったのですか」、と私。
「いや~、そこのトコロは、全く覚えていないんだけどね」
へっ!?
「こんなん、もう、つくれんのですわ、の、こんなん、は、その町工場の、年代モノの古びた機械そのもののコトであったわけ」
あ~。
「まさに、重量級の、無骨でいて繊細で緻密な機械。コンピューターやらナンやらとは真逆の、究極のアナログマシーン」
ふむふむ。
「手仕事ではないのだけれど、機械と人間とが一体化したような、そういう意味では、限りなく手仕事に近い、と、言ってもいいような、そんな、機械、なんだな」
Aくんが言おうとしていることが、なんとなくながらも、わかったような、そんな気がしてくる。
「ときどき、フテくされたり、ダダをこねたりしよるんですけどな、ま~ま~ま~ま~言うて、ナダめすかして、フンバってもろてます。と、そのオヤジさんが語っていたわけよ」
なるほど、なるほど。
「そして、彼は、トドメに、こう言ってのける。せやけどね、ナンやカンや言うても、昔の機械は強いんですわ、とね」
ん~、機械。たかが機械、されど機械。だな~、と、あらためて。
機械は、筋肉。人間は、脳。その、ハイレベルでストロングな渾然一体型が、この国の、他の追随を許さない得意技、で、あったのかもしれないな。(つづく)