ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.824

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と五十五

「ムカシノ キカイハ ツヨインデスワ」

 「こんなん、もう、つくれんのですわ」

 ん?

 なぜか関西訛(ナマ)りで、そう喋り出した、その、テレビ画面の中のオヤジさんは、いかにも、町工場で働くその道のプロ職人、という風情のオヤジさんだったんだよな~、と、いつもの唐突感丸出しで、Aくん。おそらく、ドキュメンタリー番組かナニかを見ていた時のコトを、突然、思い出したのだろう。

 「その、なぜか関西訛りのプロ職人さんは、ナニをつくっておられる方だったのですか」、と私。

 「いや~、そこのトコロは、全く覚えていないんだけどね」

 へっ!?

 「こんなん、もう、つくれんのですわ、の、こんなん、は、その町工場の、年代モノの古びた機械そのもののコトであったわけ」

 あ~。

 「まさに、重量級の、無骨でいて繊細で緻密な機械。コンピューターやらナンやらとは真逆の、究極のアナログマシーン」

 ふむふむ。

 「手仕事ではないのだけれど、機械と人間とが一体化したような、そういう意味では、限りなく手仕事に近い、と、言ってもいいような、そんな、機械、なんだな」

 Aくんが言おうとしていることが、なんとなくながらも、わかったような、そんな気がしてくる。

 「ときどき、フテくされたり、ダダをこねたりしよるんですけどな、ま~ま~ま~ま~言うて、ナダめすかして、フンバってもろてます。と、そのオヤジさんが語っていたわけよ」

 なるほど、なるほど。

 「そして、彼は、トドメに、こう言ってのける。せやけどね、ナンやカンや言うても、昔の機械は強いんですわ、とね」

 ん~、機械。たかが機械、されど機械。だな~、と、あらためて。

 機械は、筋肉。人間は、脳。その、ハイレベルでストロングな渾然一体型が、この国の、他の追随を許さない得意技、で、あったのかもしれないな。(つづく)