ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.576

はしご酒(Aくんのアトリエ) その十七

「ナンデモアル ナントデモナル ガ スタンダード シンドローム

 先人たちの並々ならぬ努力の積み重ねの賜物(タマモノ)であるのだろう、おかげさまでこの国は、大抵のモノならあるし、大抵のコトならなんとでもなる。いつのまにか、そんな、「あるなる」感が、この国のスタンダードになってしまっている、とAくん。

 なってしまっている?

 たしかに、なんとなく、そんな「あるなる」感に、危険な臭いを、感じなくはない。

 ほんの少し視野を広げ、ほんの少し思考を深めるだけで、それは、スタンダードでもナンでもなくて、明日にでも消えてなくなってしまうかもしれないほどのスペッシャルなことなんだ、というコトぐらい、容易にわかりそうなものなのに、一旦、スタンダードだと思ってしまうと、実は、そうじゃないんだ、などとは、そう簡単には思えない。そのことをAくんは、警鐘を鳴らす意味も込めて、「ナンデモアル ナントデモナル ガ スタンダード シンドローム」と呼ぶ。

 そして、ナニかの弾みでトンでもないナニかが起こり、そのスタンダードが崩れ出して初めて気付く。そういうものだ、と、重く、静かに、言い添える。

 この星の、その隅々にまで目をやれば、いたるところで、貧困に、差別に、暴力に、不条理に、喘(アエ)ぐ、数多の人たちがいることに気付く。そのことに気付くことさえできれば、自ずと、スタンダードなどではない、という危機感を、いとも簡単に共有することができるはずなのに。(つづく)