はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と三十八
「ゴミショリデ カサイタハツ?」
「モノの考え方の、その価値観の、根本的な部分が大きく違う」
ん?
「いわゆるEU諸国と呼ばれる国々との著しいギャップ。ソレは、如何ともし難い事実であり、ソレが、現実だ」
プロローグから、なんとなく、話が壮大なりそうな気配が漂う。
「ま、もちろん、EU諸国の全てが同じように足並みが揃っているわけじゃ、ないとは思うけどね。でも、少なくとも、この国のスタンダードとは、あきらかに違う」
価値観の多様性、という観点から言わせてもらえば、ナンでもカンでもEU諸国とのギャップを埋める必要なんてないのではないか、と、思うだけに、Aくんのその真意が、いったいナンなのか、ドコにあるのか、が、まったく掴みきれない。
「たとえば、リチウムイオン電池」
あ、あ~。
おそらく、廃棄、あるいはリサイクル、系、の、話だな。
「以前から、とくに廃棄の際の危険性が指摘されているわけだけれど、ナゼか、廃棄にしてもリサイクルにしても、元々内蔵されていて、取り出しにくいモノがありすぎる。危険性が高いモノが取り出しにくい、という、このナンともカンともな状況のまま、ズッと放置されてきたわけだからな。そりゃ、ゴミ処理で火災多発、なんてコトも、当然、起こってしまうわけよ」
あっ、ソレ、ニュースかナニかで見たような気がする。
「たとえば、このケータイ」
ケータイ?
意外だ。Aくんにしては、かなり今風の機種。少なくとも私のケータイよりウンと新しい。
「ナゼ、リチウムイオン電池の交換が、コチラでサクッとできないんだよ」
たしかに。
バッテリーがダメになって新しいケータイに、と、いうのが、このところのいつものパターンだ。たしか、以前は交換ができたような気がする。いや、できた。間違いない。ん~、ナニが変わってしまった、と、いうのだろう。
「詳しいコトもソコにある事実も、僕にはわからないけれど、危険なモノは、安全に、簡単に、取り出せるようにしないと、コレからも、火災などのトラブルは起こってしまうだろうな」
ナ、ナゼ、そうできないのか。
安全に、簡単に、バッテリー交換ができないようにして、新しいケータイを買わそうという戦略?、なのだろうか。じゃ、妙にAくんが推すEU諸国はドウなのだろう。すでに、もう、会心の手だてを講じているとでもいうのか。
ドウなのだろう。
悲しいかな、リチウムイオン電池一つとってみても、わからないコトだらけだ。
だ、だけど、この、「わからないコトだらけだ」、が、心の中にあるうちは、私は、まだ、大丈夫なような気がする。
(つづく)