はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と五十二
「スーパーマーケット シンドローム」
愚策やら温暖化やら国際情勢の悪化やら、で、かどうかは僕にはわからないけれど、やたらと食費が嵩(カサ)む今日この頃、食べ物は大切にしなければならないと、普通、誰だって思うだろうに、にもかかわらず、トンでもない食品廃棄、食品ロスが、まだ、そこかしこで行われていたりする、なんてコトを耳にすると、「大丈夫なのか、この国は」と、マジで心配になってくる、とAくん。
「いま、ソコにあるモノをいただく」
ん?
「言い換えるなら、『旬』をいただく」
あ~。
「旬のモノは、豊富にあるし、安いし、旨いし、栄養価も高そうだし、いいこと尽くめ」
たしかに。
「なのに、アレもコレもどうしても食べたくなる。その気持ち、わからないわけじゃないけれど、でも、ソレが、大量廃棄に繋がるとなると、やはり、捨て置けないんだよな」
「ナニか事件でもあったのですか」
「ある農家さんが、泣く泣く、収穫したある農作物を廃棄処分している、というニュースを目にしたわけ」
「廃棄処分ですか」
「温暖化の影響だと、僕は思っているけれど、一気に成長が進んでしまって、致し方なく『廃棄』ということになってしまっている、らしい」
ん~、ナニかが引っ掛かる。
「おかしくないですか。これだけ農作物の価格が高騰しつつあるのに、ナゼ、その野菜を、廃棄せざるを得ないのですか」
「メチャクチャ安くしても売れないらしい」
えっ。
「売れない・・・のですか」
「らしいな」
「廃棄も、値崩れも、売れないも、となると、厳しい、厳しすぎますよね」
「農家さん、は、ホントに厳しいと思う」
「こんな時は、皆で食べればいいじゃないですか、その野菜を。ナゼ、ソレができないのですか」
「僕はね、その理由の一つに、スーパーマーケットシンドロームがあるんじゃないか、と、密かに思っている」
「ス、スーパーマーケット、シンドローム、ですか」
「そう。ソコでは、旬など全く関係なく、一年中、あらゆるモノが売られているだろ」
「たしかに、いつ行ってもナンでも揃っていますよね」
「そのコトが、おそらく、ピーポーたちに、ジワジワと、農作物に対する歪んだ感覚みたいなものを植え付けてしまったような気がしてならないわけよ」
農作物に対する、歪んだ感覚?
「ソレは、食に対して傲慢になる、ということですか」
「そう、そういうこと、傲慢になる。そして、そんな傲慢なコトをしていれば、しまいには、トンでもないシッペ返しを喰らうことになる、ということだ」
(つづく)