ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.910

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と四十一

「シエンダンタイ シンドローム

 景気も良く、それなりに上手くいっているときには、環境問題やら人権問題やら少子化問題やら、そして、軍縮やら核廃絶やら、と、一応、理想を求めているかのように声高らかに宣っていたにもかかわらず、たとえば、経済的に雲行きが怪しくなってきた、とか、あるいは、国家間の緊張が高まってきた、とか、のその途端に、突然、「今は、ソンな呑気なコトを言っている場合ではない」みたいなコトを平然と宣いがちな、この国の、この星の、権力を握るシモジモじゃないエライ人たちってのは、いったい、ナンなんだ、と、またまた更に一層、憤りと不満とが渾然一体となって爆発寸前の様相を見せ始めたAくん。ようするに、ハナからソンなコトなどには興味なんてなく、結局は、勇ましい話と金儲けのコトしか頭の中にはないのだろう、と、絶望感を滲ませつつ熱く熱くボヤき続ける。

 「超長期でモノゴトを考えられないゆえの悲劇、ですよね」

 「いつか来(キタ)る未来に目を向ければ、自ずと、この今、考えなければ、しなければ、ならないモノが見えてくるはずなのに、いかんせん、そうは問屋が卸さない。目の前の、柵(シガラミ)やら利害やら利権やら、支援団体の意向やら、といった、大人の事情ばかりにどうしても目が向いてしまう。が、ゆえの、勇ましい話と金儲けなのだろうな」

 なるほど、と思いつつ、も、Aくんの熱き愚痴のその中に登場した「支援団体」という言葉が、ナニやらヤタラと気になり始める。

 「その支援団体。ソレって本当に必要なのでしょうか」

 「支援団体?。そりゃ~必要だろうよ。ドチラにとってもメリットがあるだろうし」

 どちらにとってもメリットがある、か~。

 あまりいい響きではない。

 「私は、団体ではなく個人が、自分の目で、耳で、頭で、心で、その人間の、組織の、その考えを知る、理解する、コトが、まず大切だと思うのです。そして、納得できれば、『支持する』、『選ぶ』、『支援する』。選挙、投票、というモノについて、自分なりに考えれば考えるほど、そうでなければならないような気がしてきてならないのです」

 「ヘタをすると、支援してくれているはずの団体に足を引っ張られる、なんてコトにもなりかねない、ということかい」

 「そうです。場合によっては、正しきコトができなくなってしまうこともあり得る。ということです」

 「支援団体の意向に振り回されて、肝心要の部分が空洞化。それゆえに他の有権者から見放される。ん~、ないことは、ない。かもしれないな」

 まさに支援団体シンドローム

 恐るべき現代社会の病。

 甘い汁に塗(マミ)れに塗れているうちに、グチュグチュと湧き出してくる「勇ましい話」と、「金儲け」。

 政治家たちが、その病から抜け出すことは、それほど容易なことではなさそうだ。(つづく)