ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.577

はしご酒(Aくんのアトリエ) その十八

「ヘイワ ノ サイテン」

 裏番組のTVアニメ、『鉄人28号』が見たくて、家族全員が集う六畳の間で、ひとり、泣きじゃくっていた、と、普通なら忘却の彼方へ消え入りそうなぐらいの過去に遡(サカノボ)り、なにやら嬉しそうにも見える表情で懐かしむ、Aくん。

 そんな、泣きじゃくる僕のことなど完全に無視して、僕以外の家族全員は、あのときのあの「東京五輪」に、ワ~ワ~と一喜一憂しながら興じていたのだ、という。

 おっ、西の大阪万博の次は、東の東京五輪か、と、私も、なんだか熱くなる。

 なぜなら、誰がナンと言おうと、この両者こそが、この国が世界に誇る伝説の、儲かるとか儲からないとか、勝ちとか負けとか、といった、そんな怪しげなモノとは出来うる限り無縁の、「平和の祭典」の二大巨頭である、と、信じて疑わないからである。というか、正確には、信じたい、疑いたくない、に、近いのかもしれないけれど。

 するとAくん、「泣きじゃくってはいたが、子どもながらに、平和だなぁ~、と、思ってはいたんだよね」、と。

 即座に、「平和の祭典ですもんね」、と私。

 「平和の祭典か~、いい響きだ」

 「ホントに、いい響きですね」

 「あらためて、平和とはナンだろう、とも、考えさせられるよな~」

 「そうですね、考えさせられる」

 これからも、この星のそこかしこで、数多くの難題やら、如何(イカン)ともしがたい闇やら、を、抱え込みながら、も、行われるのであろう、平和の祭典、の、その、平和の祭典、ならぬ、平和の採点、は、はたして、如何(イカ)がなものにあいなるのか。そこのあたりは、どうしても、随分と気にはなる。

 などと思ったりしていると、Aくん、またまた三波春夫の、もう一つの伝説の、♪東京五輪音頭のさわりの一節を、コレでもか、というほど、こぶしを効かせて歌い上げる。

 

 オリ~ンピックのっ

 顔と~顔~

 ソ~レットトントトトントッ

 顔とっ顔~

 

(つづく)